帰還ループを使用することで、出力が入力電圧に依存しないようにすることができます。基本的に、帰還経路はエラーアンプに接続されます。エラーアンプは実際の出力と望みの出力を比較し、出力を補正して一致させます。補正は常に誤差と反対方向に行われる(出力が高すぎれば下げ、出力が低すぎれば上げる)ので、この帰還は「負」と呼ばれます。帰還ループが「正」の場合、あらゆる誤差が増幅され、出力は発振するか、あるいは、急激に最小または最大レベルになります。過渡動作状態で正の帰還条件が発生しないようにすることが、ループ設計の最も難しい課題の一つです。
帰還の長所は、負荷の変化による出力電圧の変化だけでなく、入力電圧の変化も補償されることです。同じ帰還ループで両方の状況を補正することができます。閉帰還ループの別の長所して、入力と出力の構成が同じである必要がないことが挙げられます。帰還ループを使用して、可変入力電圧電源から定電流を生成することができます。エラーアンプは出力電圧ではなく、単純に出力電流に基づいた帰還信号に応じて、出力を調整します(実際には、電圧アンプではなく、トランスコンダクタンスアンプになります)。
簡単な非絶縁型降圧レギュレーターを使って、帰還設計を分析しましょう。標準的な回路図は次のようになります。
機能ブロックの観点からみると、図2.1は以下のようになります。
機能ブロックごとにゲインKがあります。パワースイッチング素子(FET)のゲインはKPWR、L1とC1で形成された出力フィルターのゲインはKFILT(S)、帰還素子(R1と R2で形成された抵抗分圧器)のゲインはKFBです。結果として生じる帰還信号は加算点で基準電圧VREFと比較され、ゲインがKEA(S)のエラーアンプA1によって誤差が増幅されて、ゲインがKMODのPWM変調器を制御します。これらのゲインブロックには、増幅度が高いものもあれば、信号を減衰するものもありますが、全体の開ループゲイン(全てのゲインの合計)は正になり、通常およそ1000です。
図1に示した簡単な回路は、出力LCフィルターに起因する、次式に示す周波数の共振点(ポール)を持ちます。
さらに、コンデンサーのESRに起因するもう一つの共振点(ゼロ)を持ちます。
fPOより高い周波数では、出力フィルターの2次LC特性により、ゲインが−40dB/decadeのレートで減少します。ゲインがユニティ(ゲイン=0dB)に達するポイントがクロスオーバー周波数fCです。周波数fZOで、フィルターコンデンサーのESRに起因する1次RCフィルターの影響により、ゲインのスロープが−20dB/decadeに変わります。周波数に対する正規化ゲインをプロットすると、スロープと位相が周波数と共に変化することが分かります。
位相プロットは、エラーアンプA1での入力周波数の反転による180°が付加された位相変化です。
この位相プロットから分かるように、クロスオーバー周波数での位相変化が合計で−180°または−360°なので、この回路はクロスオーバー周波数で不安定になります。このため、コンバーターが正帰還領域に入り、出力がリンギングを開始するか、急に発振状態になります。
エラーアンプ段のゲインを増加させることにより、全体のゲインがユニティになる周波数をより安全な領域に移動させることができます。位相余裕(システムのfCにおける全体の位相と−180°との差)とゲイン余裕(位相が−180°のときのシステムのゲイン)により、帰還ループがどれだけ安定しているかが決まります(図4)。
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※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。
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