Bluetooth 5の特長を解説するシリーズ。最終回の今回は、従来比8倍となったブロードキャスト通信容量の仕組みを説明します。これにより、ビーコンなどの用途で以前よりも優れたユーザー体験を提供できるようになるのです。
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戦闘機に焦点を当てた、航空博物館を訪れた時の話です。「P-51(Mustang)」から始まるその展示に、筆者は思いを巡らせていきました。爆撃機の護衛、空中戦、ドイツ空軍との交戦という危険な任務――。ふと振り向けば、Curtiss-Wrightの「P-40」が向こうに見えます。よく見ようと近づくと、不快な警笛に続いてラジアルエンジンがうなり声をあげるので、上を見ればガルウイングの「F4U Corsair(コルセア)」が、まるで急降下するかのごとくぶら下がっています。ふと、手に振動を感じたのでスマートフォンの画面に目をやると、そこにはCorsairの解説文が……。
まったくもって、驚くほど素晴らしい博物館でした。展示物を見るたび、自分のスマートフォンやスマートウォッチに、解説がポップアップして出てくるのです。
そして、こんなユーザー体験を可能にしている技術が、Bluetooth 5です。博物館での体験も、Bluetooth 5と、巧みに設計されたアプリの組み合わせによって実現されたユーザー体験の事例の1つにすぎないわけです。米国のリサーチ会社ABI Researchは、2021年までに年間5億6,500万のBluetoothビーコンが販売されると予測しています。
Bluetooth 5では、従来比「4倍の通信距離」「2倍の速度」、そして「8倍のブロードキャストメッセージング能力」を備えています。前者2つについては既に解説済みですので、今回は、ブロードキャストメッセージング能力についてお話しましょう。
では、Bluetoothはこれをどうやって成し遂げているのでしょうか。少し詳しく見ていきます。
Bluetooth 5が提供する3つのlow energy PHYは、次の通りです。
つまり、2つの新しいPHYによって通信距離が4倍に、速度が2倍になるわけですが、では、ビーコンのメッセージング能力はどのように向上するのでしょうか。
Bluetooth 4.0を振り返ってみると、advertising(アドバタイジング)パケット中のペイロードは最大31オクテットでした。Bluetooth 5では、advertisingチャネルとadvertising PDUを追加することで、ペイロードを255オクテットに拡大しています。
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