引き続き、代替えの利かない一部のタイプの抵抗器について説明します。今回は、ヒューズ(ヒューズブル)抵抗器と、ソリッド形抵抗器、金属板抵抗器を紹介します。
前回説明したヒューズ付き抵抗器は安全に電流を遮断できますが温度ヒューズが作動する発熱量には必要最小限の値があり、AUX出力などの小電力では動作しない場合もありますし、形状的にも大型化します。また既に説明した電流ヒューズでは大きさや応答時間で用途に合致しない場合があります。
これらのヒューズやヒューズ付き抵抗器に対して“ヒューズ抵抗”は普段は抵抗器として機能し、異常時には抵抗体が安全に溶断して回路電流を遮断するという機能を持った抵抗器です。これは高温時に抵抗体が焼損して断線する現象を利用したものです。構造的には(酸化)金属皮膜抵抗と同じ構造をしていますが抵抗体が焼損するため外装塗装は難燃性です。
ある程度の抵抗値が必要で、かつ回路に異常が発生したときに発煙、発火することなく溶断してほしい箇所に使用します。ただしその原理上、応答電流値や応答時間のバラツキはヒューズやヒューズ付き抵抗器に対して大きくなります。
ヒューズ抵抗に限らず、炭素被膜抵抗器、金属皮膜抵抗器などは抵抗値の調整のためにレーザーカットなどによる調整用のミゾを抵抗皮膜表面に刻みます。
図1はそのイメージです。図1の展開図の通り、ミゾとミゾに挟まれた抵抗体の部分にはどうしても電流が集中してしまいます。
特にヒューズ抵抗器では抵抗体の温度上昇で抵抗体を焼損させて保護動作を行いますのでサージ耐量は通常の抵抗器に対して低下しています。
つまりヒューズ抵抗器はその性質上、他の抵抗器に比べて許容サージ耐量が小さいので使用に当たってはメーカーから図2のサージ耐量の保証曲線(電力−時間特性)を入手して、必要なディレーティングを確保する必要があります。
特にスイッチング電源などパルス波形で使用する回路では、ヒューズと同様に起動時などの最大パルスによって溶断しないかを確認をする必要があります。
このサージ耐量を上げるにはミゾ切をやめるわけにはいきませんからミゾの切削長を減らして電流通路の面積を広くします。ただし、大幅に抵抗値を調整することができなくなりますので、抵抗塗膜のバラツキを厳密に管理するなどの工程管理能力が要求されます。
以下に、ヒューズ抵抗器の使用上の注意事項を列挙します。
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