マイコンアーキテクチャの基本理解 〜 キャッシュ構成、エンディアン、浮動小数点、バス構成、例外処理:ハイレベルマイコン講座:【アーキテクチャ概論】(2)(3/3 ページ)
ソフトウェアやハードウェアの異常事態のフォルト(Fault)や割り込みが発生した時に、CPUがメイン・プログラム以外のプログラムを実行する処理を「例外処理」と呼ぶ。「例外処理」の定義は、各マイコンで異なるため、マニュアルを確認する必要がある。例えばリセット処理を例外処理に含むマイコンもあれば、含まないマイコンもある。
フォルトや割り込みやリセットの処理方法は、マイコンごとに異なり、この処理方式も「アーキテクチャ」の1つの要因といえる。例えば、割り込みが発生時に、コンテキスト(現在のPC[プログラム・カウンタ]やレジスタの状態)をスタックに保存する(PUSHと呼ばれる)が、保存するレジスタの種類や順番はマイコンによって異なる。また、割り込み処理が終わり、コンテキストをスタックから戻す操作(POPと呼ぶ)の手順もマイコンによって変わる。
例外処理は、ハードウェアによって行われるとは限らない。ソフトウェアが介在するマイコンもある。例えば、ArmのARM7プロセッサの例外処理は、ソフトウェアの介在が必要だが、Cortex-Mプロセッサは、統合ネスト型ベクタ割り込みコントローラ(NVIC:Nested Vectored Interrupt Controller)という割り込み制御のハードウェアが行う。
最近のマイコンは製造プロセスの微細化により、高機能な論理回路を実装しても、さほどコストに影響を与えないため、割り込み制御モジュールが実装される場合が多い。
割り込み処理については、「Q&Aで学ぶマイコン講座(27):割り込みハンドラとは?」で詳しく解説している。
日系半導体メーカーにて、25年以上にわたりマイコンの設計業務に携わる。その後、STマイクロエレクトロニクスに入社し、現在までArm Cortex-Mプロセッサを搭載したSTM32ファミリの技術サポート業務に従事。Armマイコン以外にも精通しており、一般的な4ビットマイコンから32ビットマイコンまで幅広い知識を有する。業務の傍らマイコンに関する技術論文や記事の執筆を行っており、複雑な技術を誰にでも分かりやすい文章で解説することがモットー。
- マイコンの“アーキテクチャ”って何?
すでにマイコンを使い込まれている上級者向けの技術解説の連載「ハイレベルマイコン講座」。今回から3回にわたり、マイコンのアーキテクチャについて詳しく解説する。第1回(=今回)は、まず、CPU(Central Processing Unit)の構成要素と各部の動作について解説し、次に「アーキテクチャ」の各要素についてみていく。
- マイコンに搭載されたA-Dコンバーターの測定精度を上げる方法【原因と対策】
すでにマイコンを使い込んでいるマイコン上級者に向けた技術解説連載「ハイレベルマイコン講座」。今回から2回にわたって、ノイズの影響を受けず、マイコンに搭載されているA-Dコンバーター本来の測定精度を得る方法を、実際の測定を基に解説する。
- マイコンのセキュリティ機能を詳細解説 〜ハードウェア編
マイコンを使い込んでいる上級者を対象にさらなるスキルアップ、知識習得を目指す連載「ハイレベルマイコン講座」。今回から2回にわたって、マイコンで実現されるセキュリティ機能について詳しく解説する。
- ESDによる不具合発生メカニズムと対策のヒント
今回から2回にわたり、マイコンを使用する上で必要不可欠な「ESD対策」について解説していく。第1回は「ESDの破壊モード(メカニズム)」と「ESDの主な発生要因とその対策」を取り上げる。
- データシートを正しく理解するなら「凡例」から気を抜くな
今回から3回にわたり、マイコン製品のデータシートを正しく理解することを目的に、実際のデータシートを見ながら、データシートの注意点を紹介していこう。第1回は、おろそかにされがちな「凡例」をはじめ、「絶対最大定格」「一般動作条件」「電源電圧立ち上がり/立ち下がり時間」の各項目について解説していく。
- 不良解析レポートを理解するための基礎知識 ―― 一次物理解析&電気的特性評価
マイコンをより深く知ることを目指す新連載「マイコン講座」。今回から3回にわたって、マイコンメーカーが行っている「不良解析」を取り上げる。メーカーから送られてくる不良解析レポートの内容を理解するための、不良解析に関する基礎知識を紹介していく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.