プリント配線板(PCB)におけるパターン配線のレイアウトは、入力または出力フィルターの効果に大きく影響します。入力コンデンサーはできるだけ入力ピンの近くに取り付けなければならない、ということは既に述べました。高品質のコンデンサーのESRはmΩ単位です。同様に、フィルタリングの効果を損なうことがないよう、コンデンサーとコンバーターピン間の接続インピーダンスもミリオーム(mΩ)単位でなければなりません。配線抵抗の計算を式1に示します。
標準的なPCBの銅配線の厚さは35μmなので、幅1mm長さ1cmの配線のDC抵抗は25℃でほぼ5mΩ、+85℃では6mΩまで増加します(銅の低効率=1.7×10-6Ω/cm、温度係数=+0.393%/℃)。
また、DC抵抗に加えてACインピーダンスも考える必要があります。PCB配線には、他の配線や部品に対するインダクタンスと分布容量の両方が存在します。このため、配線、プレーン、および部品の間で、容量あるいはインダクタンスの関係で干渉が組み合わされることにより、予期せぬ結果を招くことがあります。例えば、上側PCBの配線が下側PCBの別の配線上を通っている場合、あるいは多層PCBで上層の配線が下層の配線の上を通っている場合、上の配線の特性インピーダンスZ0と容量C0は式2で得られます。
したがって、フィルタリング回路に使用するPCB配線は、他の信号配線の上や近くを通さないようにすることが重要です。フィルター部品の下側にグランドプレーンを配置できるよう、両面式あるいは多層式のレイアウトを使用するのが理想的です。PCBが片面式の場合は、接続をできるだけ短く、かつ広くする必要があります。
また、フィルター部品は、理想部品ではなく現実の部品として考える必要があります。これは、高周波域での部品の振る舞いの決定には、コンデンサーの寄生インダクタンスやインダクターの寄生容量が主導的な役割を果たすことを意味します。言葉を換えると、この領域ではコンデンサーがインダクターとしての振る舞いを、逆にインダクターがコンデンサーとしての振る舞いを示し始めます。抵抗も、インダクターあるいはコンデンサーとしての振る舞いを示すことがあります。これらの問題は、部品を上手に選ぶことによって、阻止したり完全に回避したりすることが可能です。最も重要な設計基準は、動作が変化し始める共振周波数です。容量性素子に関するインピーダンスの周波数特性を図5に示します。
実線は、コンデンサー自体の周波数応答を示します。コンデンサーの容量は4.7nF、寄生ESRは0.01Ω、寄生ESLは2.5nHです。破線は、同じデバイスを使い、不適切な接続をシミュレートした場合の結果を示したものです。この不適切な接続によって50mΩのESRと50nHのESLが新たに加わり、グラフから分かるように共振周波数が下がっています。つまり、コンデンサーは、計算共振周波数の「10分の1」の周波数でインダクターとしての挙動を示し始めます。
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