安全性設計に対するハザードベース(HB)の取り組みの第一歩は、装置に存在するあらゆる危険性を評価することです。次に、それらの危険性がどのようにして実際の危険(有害)となり得るのかを、人体へ伝達を検討することで究明することです。そして最終段階では、有効な安全策を講じるための保護を設計することです。全ての段階は、装置が作られる前の設計評価プロセスにおいて評価することができます。取り組みの成功は、潜在的な危険性、伝達メカニズム、けがに対する人間の生理的感受性に関する共通認識を集めるためのリサーチおよび、健全なエンジニアリング方針を適用するためのリサーチに基づいています。
図2は、安全性設計のプロセスを表しています。これまでに、電気製品および、電子製品を安全に使えるようにするために、過去の事故の調査に基づいてさまざまな安全規格や規制、認証が作られてきました。しかし、単に安全規格に適合する電源を作ることと、安全性を設計することは違います。
安全性の設計には、最初から危険性、伝達メカニズム、傷害の危険要因を考慮し、適切な安全策を設計に盛り込むことが含まれます。設計によって危険性を下げる例としては、常に電源を供給し続ける必要のない装置にはAC電源ではなくバッテリー電源を選ぶということが挙げられるでしょう。そして、バッテリー電圧は極力低いものを選んで安全を図ることです。
もう1つの例は、電動工具の製造現場でよく使われる黄色いトランスです。230VacのAC電源を110Vacに下げ、さらにセンタータップをグランドに接続した分割巻線出力を使うように設計することで、グランドに対する最大AC電圧は55Vと安全になります(図3)
設計によって危険性を排除できない場合、プロセスの次の段階は、人体への接触を起こして傷害につながる可能性のある伝達メカニズムを究明することです。最も簡単な方法は、覆う、囲む、絶縁するなどにより、偶発的な接触を物理的に防ぐことです。進入保護(IP)コードでは、人間の指を直径12.5mm、長さ80mmと見なして作った標準プローブを使って物理的な保護等級を定義しています。
レベル | 物質サイズ | 有効な保護 |
---|---|---|
0 | 接触や物質の進入に対して有効な保護が無い | |
1 | >50mm | 偶発的で広範囲にわたる人体接触(人の手など)に対する保護はあるが、故意の接触に対する保護はない |
2 | >12.5mm | 偶発的な指の接触に対する保護がある |
3 | >2.5mm | 工具や太いワイヤなどを介した偶発的な接触に対する保護がある |
4 | >1mm | 細いワイヤや小さな部品などを介した偶発的な接触に対する保護がある |
5 | 防じん形 | 塵埃(じんあい)の進入を完全に防ぐことはできないが、機器の運転に支障はない。偶発的な接触に対する完全な保護がある |
6 | 耐じん形 | 塵埃(じんあい)の進入が全くない。偶発的な接触に対する完全な保護がある |
IPコードの2番目の数字は、液体の進入保護レベルを0(水の進入に対する保護なし)〜8(完全な浸水状態)で表しています。
レベル | テスト | 有効な保護 |
---|---|---|
0 | 保護なし | なし |
1 | 滴下水 | 小雨に対する保護がある |
2 | 15℃以下の滴下水 | 大雨に対する保護がある |
3 | 噴霧水 | 60℃までの噴霧水に対する保護がある |
4 | 飛沫 | あらゆる角度からの噴霧水に対する保護がある |
5 | 噴流 | ノズルから吹きつけられる水に対する保護がある |
6 | 強力な噴流 | 大型ノズルから吹きつけられる水に対する保護がある |
6K | 圧力のかかった強力な噴流 | 強力な噴流に対する保護がある |
7 | 1m以下の浸水 | 30分の浸漬に対する保護がある |
8 | 1mを超える浸水 | 連続した時間の浸漬に対する保護がある |
屋内で使用する場合、乾燥した場所であればIP等級はIP20で十分と考えられます。高湿の屋内(浴室など)では、少なくともIP41(小さな物質と滴下水に対する保護あり)が必要で、屋外では、IP等級は少なくともIP54(耐じん型、飛沫による悪影響なし)が必要です。しかし、多くの場合、IP67(塵埃(じんあい)と浸水に対する完全な保護あり)が求められます。
設計による安全性のための最後の保護対策は、警告ラベルを貼ったり、重要な安全情報に関するリーフレットや仕様説明シートを装置に添付することによって、ユーザーに危険な状況に対して注意を向けさせることです。安全情報の要求事項は、関連全ての健康および、安全基準に記載され、ラベル類は危険度ごとに「警告」「注意」「危険」のように明示されていなくてはなりません。DC-DC電源の場合、危険電圧が発生することがない限り、危険に対する警告ラベルを貼る必要はまずありません。
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