直流電源を長期間にわたって安心して利用するためには、適切な保守を行う必要がある。
直流電源から出力される電圧および、電流が仕様の範囲にあるか、また電圧モニターおよび電流モニターの測定値が仕様の範囲内にあるかを、校正されて確度が保証されているデジタルマルチメーターと分流器(シャント抵抗器)使って、定期的に直流電源の確度を確かめる。校正を行う電圧値や電流値は、取扱説明書に書かれている設定値で行う。電流校正では分流器への配線抵抗を小さくするため、太い線材を使い、短く配線する。
なお、正しい校正作業を行うには、取扱説明書に書かれたウォームアップ時間や温度環境に従う必要がある。
直流電源を長期間利用すると、使われている電解コンデンサーの劣化により、リップル電圧が増加する傾向にある。校正だけでは直流電源の劣化が分からないので、別途リップル電圧の測定をオシロスコープもしくはリップルノイズメータで測定を行えば、劣化の推移を把握できる。
冷却ファンにより、空気中に浮遊するホコリが直流電源に取り付けられているダストフィルターに蓄積して、冷却効果を低下させる。冷却効果を維持するために、時々ダストフィルターを取り外して清掃する必要がある。
また、直流電源の入力側の配線に電源プラグを使う場合、長期間にわたって電源プラグをコンセントの刺したままで使うと、コンセントと電源プラグの間にホコリがたまり発火する危険がある。時々電源プラグやコンセントの清掃が必要である。
直流電源には電解コンデンサー、冷却ファン、リレーなどの有寿命部品が使われている。パワー半導体も、温度サイクルによって劣化が生じて故障の原因となる。連続して長期間利用する場合は、メーカーに点検の方法を相談することが望ましい。周囲環境が高温である場合や、腐食性ガスなどがある場合などは劣化を早める要因となる。
また、2014年に電子情報技術産業協会(JEITA)標準化専門委員会電源グループが発表した「電源回路の安全設計で部品メーカーに要求すること」には、電源装置の更新は部品の寿命から15年を推奨しているので、これを目安に直流電源の更新を検討する必要がある。
自動車の電動化、太陽光発電の普及、データセンターへのHVDCの導入、IoT(モノのインターネット)普及によるセンサー利用の拡大など、直流電源を利用する環境は広がってきている。今後とも、直流電源は市場の新たな要求を満たすために進化を続けると期待されている。
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