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高分解能ΔΣADC回路のリファレンスノイズ低減アナログ設計のきほん【ADCとノイズ】(9)(3/4 ページ)

» 2019年11月22日 11時22分 公開

レシオメトリックリファレンス

 抵抗性ブリッジや測温抵抗体(RTD)での測定のようにセンサー励起が必要な場合は、レシオメトリック構成を使用してください。この構成では、アナログ入力とリファレンス電圧に同じ励起電源を使用します。その結果、励起電源のノイズやドリフトが測定とリファレンスに同等に影響することになります。ADCの出力コードは入力とリファレンスとの比なので、励起電源のノイズとドリフトが打ち消し合う傾向があり、そのためノイズ特性は入力を短絡した場合にかなり近くなります。一般的に、この構成では他の2つの構成と比べて総ノイズの量が最も低くなります。

 レシオメトリックリファレンスの主なマイナス面は、センサー励起が必要なアプリケーションにしか使用できないことです。したがって、センサー励起が必要ないシステムの場合、他の2つの構成のどちらかを選ばなければなりません。

 図5は、図3および、図4と同じ回路にレシオメトリックリファレンス構成を使用したケースです。5Vのブリッジ励起電圧がADS1261の外部差動リファレンス電圧(REFP-REFN)としても使われていることに注目してください。

図5:「ADS1261」とレシオメトリックリファレンスを使用して抵抗性ブリッジを測定

 ここまでは、質的な面から、内部リファレンスよりも外部リファレンスの方が、ノイズ特性が良く、外部リファレンスよりもレシオメトリックリファレンスの方が、ノイズ特性が良いということを説明しました。24ビットADC「ADS1259」(Texas Instruments製)のデータシートを見れば、量的な面でも同じことが言えるのが分かるでしょう。図6に、3つの構成すべてについて測定されたノイズ特性を含む、ADS1259のデータシートからのプロット図を示します。

図6:「ADS1259」での内部、外部および、レシオメトリックのリファレンス構成による総ノイズの増加を比較

 VIN=0Vのとき、図6のプロット図からADS1259の固有ノイズがほぼ0.5µVRMSであることが分かります。100%使用率(VIN=±2.5V)のとき、内部リファレンスによりこのベースラインノイズが400%増の2.5µVRMSに増加するのに対して、外部リファレンスREF5025では総ノイズは150%増の1.25µVRMSです。この2つの曲線を、ほぼ平らなレシオメトリックリファレンス曲線と比べてみてください。レシオメトリックでは100%使用率のとき総ノイズが50%しか増加しません。この構成では、総ノイズが大幅に増えることなくADS1259のFSR全体を使用できるので、全体的なシステムのノイズ特性が最も良くなります。

 この結論をすべてのデルタ−シグマADCに同じように当てはめられるでしょうか。これまでこのシリーズでは24ビットと32ビットのコンバーターを取り上げ、電圧リファレンスノイズがこれらのデバイスに与える影響を深く理解するために分析してきました。一般に、これらの高分解能ADCは低ノイズのため、どんなリファレンスノイズでもシステムノイズに明らかな影響があります。では、低分解能ADCにはリファレンスノイズはどう影響するでしょうか。

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