高分解能ADCでのリファレンスノイズの影響を測定するのに使用した原則は、同じく低分解能ADCにも当てはめることができます。これまでの例と同じ構成を使って、分解能の異なるADCにREF6025を接続し、100%使用率での総ノイズを測定することにしましょう。図7にこの構成を示します。
図7に示したnビットADCとして、分解能の異なるADCを8つ選択します。表1は、分解能の関数としての各ADCのベースラインノイズの情報です。
ADC分解能(ビット) | ADCノイズ(mVRMS) (G=1、10SPS、VREF=2.5V) |
---|---|
8 | 19.5 |
10 | 4.9 |
12 | 1.2 |
14 | 0.3 |
16 | 0.076 |
18 | 0.0029 |
24 | 5.3×10-4 |
32 | 1.76×10-4 |
連載第1回で述べたように、低分解能ADCの総ノイズ(16ビット未満)では量子化ノイズが支配的なのが通常であり、その値は最下位ビット(LSB)サイズに相当します。逆に、高分解能ADCでは相対的に熱ノイズの量が多くなるため、18ビット、24ビット、32ビットのADCのノイズは、対応するLSBサイズより大きくなります。
100%使用率を想定したので、ADCと電圧リファレンスの合成ノイズを計算するには、それぞれのノイズの二乗和平方根(RSS)をとります。表2に、その両方からの総ノイズと、ADC単独のノイズと比較したノイズ増加率を示します。
ADC分解能(ビット) | ADCノイズ(mVRMS) (G=1、10SPS、VREF=2.5V) |
ADC+REF6025のノイズ (mVRMS)(100% FSR) |
ノイズ増加率 |
---|---|---|---|
8 | 19.5 | 19.5 | 0% |
10 | 4.9 | 4.9 | 0% |
12 | 1.2 | 1.2 | 0% |
14 | 0.3 | 0.3 | 0% |
16 | 0.076 | 0.076 | 0.01% |
18 | 0.0029 | 0.00311 | 7.40% |
24 | 5.3×10-4 | 0.00125 | 136.58% |
32 | 1.76×10-4 | 0.00115 | 553.36% |
表2には、低分解能ADCと高分解能ADCへのリファレンスノイズの影響の違いがはっきり示されています。おおよそ16ビット程度までは(表2の赤字で示したセル)、REF6025のノイズは、100%使用率でもシステムの総ノイズに実質的にほとんど影響しません。これらの分解能の場合、ADCの高レベルの量子化ノイズが、低レベルのリファレンスノイズよりも問題になります。したがってこの場合は、とりわけシステムのコストやサイズが増加することと比較すると、低ノイズの外部リファレンスの利点がほとんど生かされません。実際に、このような理由から多くの低分解能ADCには外部リファレンス入力がなく、代わりに内部リファレンスに頼るか、電源電圧がこの機能を果たすこともあります。
だからといって、低分解能ADCを使うときにリファレンスノイズを気にしなくていいわけではありません。累積的な影響は、特定の電圧リファレンスのノイズ、システム帯域幅および、使用率によって変わります。ざっと計算して、外部部品がシステムに与えるであろう一般的な影響を判断することをお勧めします。
常にリファレンスノイズの影響が大きいのは、18ビット、24ビット、32ビットの高分解能ADCの場合です(表2の青字で示したセル)。これらのADCすべてで、ADC単独と比較してノイズが大幅に増加します。ADCの分解能が増加するほどこの結果がより明白になり、32ビットADCではリファレンスノイズだけで553%と信じられないほどノイズが増加します。高分解能のレベルでは、この記事で述べたノイズを低減する方法を用い、適切なリファレンス構成を選択することが、高精度の測定を維持するうえで非常に重要です。
高精度ADCへのクロックの影響については、次回に紹介します。
電圧リファレンスのノイズがデルタ−シグマADCに与える影響を理解する際の重要ポイントを以下にまとめました。
テキサス・インスツルメンツ 高精度ADC製品プロダクト・マーケティング・エンジニア
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