1980年代になると、テレビ画像の高画質化の研究が進み、高速A/D変換器が活発に開発されるようになった。この研究成果から生まれた100Mサンプル/秒以上の高速A/D変換器が市販されるようになり、デジタルオシロスコープに搭載されるようになった。初期の高速A/D変換器を搭載したデジタルオシロスコープは、取り込んだ波形がCPUによって画像処理されたため、大容量の波形メモリを搭載すると画像が表示されるまでの時間がかかるという欠点があった。
波形メモリの容量が小さなデジタルオシロスコープでは、現在でも波形データ処理を全てCPUで行うものがある。
1991年に発売されたテクトロニクスのTDS340は、2チャンネル、100MHz帯域、500Mサンプル/秒、8ビット、波形メモリ1kワード(オプションで50kワード)の高速A/D変換器を搭載したデジタルオシロスコープであった。
デジタルオシロスコープは、A/D変換器によって取り込んだ大量の波形データを処理して画像データに変換するためにデッドタイムが必要となり、波形の取りこぼしが生じて波形更新レートが速いアナログオシロスコープとは、表示が異なって見えることがある。
波形の取りこぼしがあると、発生頻度の少ない異常波形を捕らえることが難しくなり、回路評価を効率的に行えない課題があった。
波形更新レートを早くするためには、高速に波形データを処理できる画像処理DSP(digital signal processor)を搭載して、効率的なアルゴリズムで波形データを表示できるようにする必要がある。
最近の多くのオシロスコープは、波形データ処理を高速に行うための画像処理DSP回路を搭載している。
画像処理DSPは波形更新レートを早くするだけではなく、輝度階調を付けることによってアナログオシロスコープのような表示ができるようになった。下記には、ビデオ波形をアナログオシロスコープで観測した場合(左)、初期のデジタルオシロスコープで観測した場合(中)、最近の高性能デジタルオシロスコープで観測した場合(右)を示す。
1999年、テクトロニクスは画像処理DSPを搭載したデジタルオシロスコープTDS3000シリーズを発売した。この製品の登場によって、アナログオシロスコープとデジタルオシロスコープの画面の見え方の差はほぼなくなった。
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