電解コンデンサーを使いこなす上で避けて通れないドライアップ寿命、いわゆる寿命について説明します。寿命設計は正しく設計しないと数年後に市場でパンクや液漏れなどの不具合を招きます。
電解コンデンサーはその材料や製造工程で化学薬品を利用していますので、これらの面から電解コンデンサーを使う上での注意点や取り扱いなどについて前回、説明をしました。前回の資料を通じて電解コンデンサーは飲食店街、火力発電所近傍、火山地帯、温泉地、海辺などの環境での保管や使用に感受性があることを理解していただけたかと思います。
今回は前回に説明しなかった、電解コンデンサーを使いこなす上で避けて通れないドライアップ寿命、いわゆる寿命*について説明します。寿命設計は正しく設計しないと数年後に市場でパンクや液漏れなどの不具合を招きます。
*:一般に湿式アルミ電解コンデンサーでは電解液の蒸発で決まるドライアップ寿命を"寿命"としていますので本稿でも単に寿命とします。
コンデンサーの寿命(耐久性)はカタログ、仕様書などで「定格温度T0で〇〇〇時間の場合、20%容量減」などの書式で記載されていて、設計者はこの値を参考に1式の10℃2倍則で寿命を推定しています。ですが電解液の蒸発現象などは本来、2式の熱エネルギーに関係するアレニウス則に従うはずです。
この2者は図1に示すように10℃2倍則がアレニウス則の良い近似式であるという関係になります。
しかし低温域ではズレが大きくなりますので10℃則の適用は40℃ぐらいまでを近似の下限とし、上限の方は定格温度を超えると蒸発以外の影響も現れますので定格温度までとしてください。
蒸発を計算する時の温度は電解液が含侵された素体の中心温度が基準です。
一方、カタログの定格温度は缶の周囲温度Taであり、さらにこの定格温度には図2に示すように
(a)一般品の場合 ⇒リップル電流を流さない時
(b)高周波品の場合⇒リップル電流を流した時
の2つの定義がありますが図2に示すように両者の違いはリップル電流による自己温度上昇を前提にするか否かの差だけです。
つまり、(a)の一般品はリップル電流を流さずに電圧印加のみで寿命試験を行いますので、リップル電流を流す場合はΔT0の分だけTaの制限が厳しくなります。
測定値、計算値 | 基準値、保証値 | |
---|---|---|
リップル電流 | IR | IR0 |
リップル電流による 自己温度上昇 |
ΔTX | ΔT0 |
IRによる加速係数 | −−− | α |
缶表面温度 | TC | −−− |
周囲温度 | Ta | T0 |
寿命 | LX | L0 |
また、この考え方から「中心温度の上限を守れば定格以上のリップル電流を流せるのではないか?」という考え方もあり、実際に一部の高周波用途の105℃品では1.7倍程度の電流値を許容している品種もあります。
しかし過大電流を流す場合は寿命計算時の定格温度を85℃品に読み替える必要があったり、大電流によって素子内部にホットスポットが発生したりしますので具体的な使い方はメーカーに確認してください。
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