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アルミ電解コンデンサー(6)―― ドライアップ寿命中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(39)(3/3 ページ)

» 2020年01月29日 11時00分 公開
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リップル電流の保証方法

 缶内で発生した熱は缶表面から大気中へ拡散していき、缶表面と大気との間に温度差ΔTXを生じます。この熱の拡散量と温度差ΔTXの関係を熱抵抗と言い、この値は缶サイズが同一なら電気仕様に関係なくほぼ同一値となります。

 一方、缶内の温度の様子は発生損失(=電解液のESR)や缶中心から表面間の熱伝導の様子、ホットスポットの影響などでも変わってきます。

 許容リップル電流はこれらの兼ね合いで決まりますが熱抵抗の算出には収束演算が必要ですからリップル電流値は熱抵抗ではなく1品ごとに電流値を規定する、表2のような保証方法が採られています。

 表2から次のことが読み取れます。

表2:リップル電流の保証例
サイズ Φ16×25
耐圧
(V)
カタログ値 評価値
容量
C(μF)
20℃の
Z(ESR)
保証リップル
電流IR0(A)
CV積
(面積因子)
ジュール損
IR02・Z(mW)
6.3 10,000 0.017 3.63 0.063 224
10 6,800 0.017 3.81 0.068 247
16 5,600 0.017 3.81 0.090 247
25 3,300 0.017 3.81 0.083 247
35 1,800 0.017 3.81 0.063 247
50 1,200 0.022 3.51 0.060 271
63 1,000 0.024 2.89 0.063 200
80 680 0.028 2.43 0.054 165
100 390 0.028 2.43 0.039 165
  • 電極箔の面積の指標であるCV積は16〜25V品にピークがあり、電解紙のマージン、箔の芯残り厚などの関係でより多くの箔を巻くことができています。
  • 10V〜35Vは同じESRを示しておりこれらは同じ電解液や電解紙を使用していると推定できます。
  • 80V、100V品も同じESRですから両者は同じ電解液や電解紙を使用していると推定できます。
  • 6.3V品および、63V品以上ではジュール損以外の要因によるリップル電流の低下があります。

 このような傾向は同じシリーズであれば缶サイズに関わりなく同じ傾向を示します。

 今回で寿命に関する説明を終えるつもりでしたが、今回説明した計算式では単一動作モードの計算条件しか説明していません。
 実際の機器では単一のモードで寿命を終えることはほとんどなく、いくつかの負荷モードの組み合わせで動作していますがこの説明は次回にしたいと思います。


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執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。


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