現在のような高集積で高性能なデジタルICがない時代は、デジタルイクイップメント(DEC)のミニコンピュータPDP-8などを使ったラックシステムとしてFFTアナライザーが登場した。日本では小野測器が1973年、振動解析を行うための装置として、ミニコンピュータを使ったFFTアナライザーを始めて製品化した。
1970年代中ごろに登場した8ビットのマイクロプロセッサによって、FFT演算はミニコンピュータを利用しなくてよくなり、製品の小型化が急速に進んだ。1975年にIEEEによってGPIB規格が定められ、1980年代になると3.5インチのフロッピーディスクの登場によって、コンパクトなFFTアナライザーが登場する環境が整った。当時の代表的なFFTアナライザーとして小野測器のCF-350があげられる。
1980年代になると多くの技術者がFFTアナライザーを使うようになったため、FFTアナライザーの解説書が登場した。代表的な書籍として「FFTアナライザー活用マニュアル」(城戸健一編著、1984年発行)「2チャンネルFFTアナライザー活用マニュアルII」(城戸健一編著、1985年発行)がある。現在FFTアナライザーについて解説した書籍は販売されていないが、職業能力開発総合大学校能力開発研究センターがインターネット上に公開している「応用短期課程モデル教材―振動実験及び振動解析を活用した機械設計技術―」の第2章「振動測定技術」(執筆担当:小野測器 江連勝彦、2005年発行)にFFTアナライザーの解説が書かれている。
FFTアナライザーを構成するデジタルICやA-D変換器が高性能になったことに加え、PCによって高度な信号処理ができるようになったため、FFTアナライザーは従来のポータブル型と、PCと組み合わせて利用するPCベース型に別れた。ポータブル型は1〜4chの製品となっており、小型化が進んだ。PCベース型は、さまざまな用途に使えるよう自由度が増す製品となっている。
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