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FFTアナライザーの歴史と選定するための仕様の理解FFTアナライザーの基礎知識(1)(5/5 ページ)

» 2020年06月11日 11時00分 公開
[TechEyesOnline]
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波形メモリ

 周波数分析したい信号が安定であれば、下表に示すように波形メモリ容量(点数)と分解能の関係を満たせば十分である。

周波数レンジ 4096点/1600ライン 8192点/3200 ライン 1万6384点/6400ライン
分解能(Δf) 時間波形の表示長 分解能(Δf) 時間波形の表示長 分解能(Δf) 時間波形の表示長
100kHz 62.5Hz 16ミリ秒 31.25Hz 32ミリ秒 15.625Hz 64ミリ秒
10kHz 6.25Hz 160ミリ秒 3.125Hz 320ミリ秒 1.5625 Hz 640ミリ秒
1kHz 625mHz 1.6秒 312.5mHz 3.2秒 156.25mHz 6.4秒
100Hz 62.5mHz 16秒 31.25mHz 32秒 15.625mHz 64秒
10Hz 6.25mHz 160秒 3.125mHz 320秒 1.5625mHz 640秒
1Hz 625μHz 1600秒 312.5μHz 3200秒 156.25μHz 6400秒
100mHz 62.5μHz 1万6000秒 31.25μHz 3万2000秒 15.625 μHz 6万4000秒
10mHz 6.25μHz 16万秒 3.125μHz 32万秒 1.5625μHz 64万秒
表1: データ長(サンプリング点数)、周波数レンジ、周波数分解能、時間波形の表示長の関係

 実際の現象は安定していない場合があるため、波形メモリは測定対象にあわせて選択することが必要となる。特に現象が長周期で変動する場合は、分析した周波数分解能と記録時間から波形メモリ容量を決める必要がある。

リアルタイムレート

 FFTアナライザー内部では、A-D変換器によってデジタル化された波形信号はいったんバッファーメモリに取り込まれてからFFT演算が行われる。FFT演算を行う時間より波形を取り込む時間が長い場合は、現象を切れ目なく周波数分析ができるリアルタイム動作となる。一方、FFT演算を行う時間より波形を取り込む時間が短い場合は、現象の一部が周波数分析できなくなる非リアルタイム動作となる。リアルタイムレートとは現象を途切れなく周波数分析できる上限を意味する。

 FFT演算を行う演算処理ICが高速化してきたので、最近のFFTアナライザーでは高い周波数まで複数チャンネルを途切れなく周波数分析できる。

図12:リアルタイム動作と非リアルタイム動作

 周波数や振幅の変動などをより細かく観測できるようにするため、FFT演算をオーバラップして行う工夫がされている。

図13:オーバラップ処理時のリアルタイム動作

アナログ出力

 FFTアナライザーを用いてアクチュエータなどの伝達関数を測定するような場合は、アナログ出力を持った製品を選択する。伝達関数を求める用途は多くないため、アナログ出力はオプションとなっていることが多い。

 アナログ出力が絶縁されている製品と絶縁されていない製品があるので、用途に合わせて選ぶ必要がある。

 アクチュエータを駆動するためには外付けのアンプやドライバが必要となるため、利用するアンプやドライバの特性をあらかじめ知っておく必要がある。

電源

 FFTアナライザーは屋内の実験室で使う場合は商用の交流電源を使えるが、屋外で利用する場合は商用電源が使えない場合がある。特にFFTアナライザーを設備診断で利用する場合は、電池駆動ができる製品を選ぶのがよい。電池を利用して使う場合は駆動できる時間をあらかじめ知っておく必要がある。FFTアナライザーを利用する時間が駆動時間より長くなると、予測される場合は電池が交換できる製品を選ぶ必要がある。

冷却方式

 FFTアナライザーを音響測定で利用する場合は、測定対象の音源以外から騒音が発生すると測定結果に影響を与えるので、FFTアナライザーには騒音源となる冷却ファンがないことが望ましい。

外部制御

 FFTアナライザーにはアナログ入力端子以外に、PCなどに接続して設定や測定結果の転送を行うための通信制御ポート、測定結果や設定値を保存するための外部メモリポート、測定開始点を決める外部トリガー入力、トラッキング解析を行うための外部サンプリング入力がある。


転載元「TechEyesOnline」紹介

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