周波数分析したい信号が安定であれば、下表に示すように波形メモリ容量(点数)と分解能の関係を満たせば十分である。
周波数レンジ | 4096点/1600ライン | 8192点/3200 ライン | 1万6384点/6400ライン | ||||
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分解能(Δf) | 時間波形の表示長 | 分解能(Δf) | 時間波形の表示長 | 分解能(Δf) | 時間波形の表示長 | ||
100kHz | 62.5Hz | 16ミリ秒 | 31.25Hz | 32ミリ秒 | 15.625Hz | 64ミリ秒 | |
10kHz | 6.25Hz | 160ミリ秒 | 3.125Hz | 320ミリ秒 | 1.5625 Hz | 640ミリ秒 | |
1kHz | 625mHz | 1.6秒 | 312.5mHz | 3.2秒 | 156.25mHz | 6.4秒 | |
100Hz | 62.5mHz | 16秒 | 31.25mHz | 32秒 | 15.625mHz | 64秒 | |
10Hz | 6.25mHz | 160秒 | 3.125mHz | 320秒 | 1.5625mHz | 640秒 | |
1Hz | 625μHz | 1600秒 | 312.5μHz | 3200秒 | 156.25μHz | 6400秒 | |
100mHz | 62.5μHz | 1万6000秒 | 31.25μHz | 3万2000秒 | 15.625 μHz | 6万4000秒 | |
10mHz | 6.25μHz | 16万秒 | 3.125μHz | 32万秒 | 1.5625μHz | 64万秒 | |
表1: データ長(サンプリング点数)、周波数レンジ、周波数分解能、時間波形の表示長の関係 |
実際の現象は安定していない場合があるため、波形メモリは測定対象にあわせて選択することが必要となる。特に現象が長周期で変動する場合は、分析した周波数分解能と記録時間から波形メモリ容量を決める必要がある。
FFTアナライザー内部では、A-D変換器によってデジタル化された波形信号はいったんバッファーメモリに取り込まれてからFFT演算が行われる。FFT演算を行う時間より波形を取り込む時間が長い場合は、現象を切れ目なく周波数分析ができるリアルタイム動作となる。一方、FFT演算を行う時間より波形を取り込む時間が短い場合は、現象の一部が周波数分析できなくなる非リアルタイム動作となる。リアルタイムレートとは現象を途切れなく周波数分析できる上限を意味する。
FFT演算を行う演算処理ICが高速化してきたので、最近のFFTアナライザーでは高い周波数まで複数チャンネルを途切れなく周波数分析できる。
周波数や振幅の変動などをより細かく観測できるようにするため、FFT演算をオーバラップして行う工夫がされている。
FFTアナライザーを用いてアクチュエータなどの伝達関数を測定するような場合は、アナログ出力を持った製品を選択する。伝達関数を求める用途は多くないため、アナログ出力はオプションとなっていることが多い。
アナログ出力が絶縁されている製品と絶縁されていない製品があるので、用途に合わせて選ぶ必要がある。
アクチュエータを駆動するためには外付けのアンプやドライバが必要となるため、利用するアンプやドライバの特性をあらかじめ知っておく必要がある。
FFTアナライザーは屋内の実験室で使う場合は商用の交流電源を使えるが、屋外で利用する場合は商用電源が使えない場合がある。特にFFTアナライザーを設備診断で利用する場合は、電池駆動ができる製品を選ぶのがよい。電池を利用して使う場合は駆動できる時間をあらかじめ知っておく必要がある。FFTアナライザーを利用する時間が駆動時間より長くなると、予測される場合は電池が交換できる製品を選ぶ必要がある。
FFTアナライザーを音響測定で利用する場合は、測定対象の音源以外から騒音が発生すると測定結果に影響を与えるので、FFTアナライザーには騒音源となる冷却ファンがないことが望ましい。
FFTアナライザーにはアナログ入力端子以外に、PCなどに接続して設定や測定結果の転送を行うための通信制御ポート、測定結果や設定値を保存するための外部メモリポート、測定開始点を決める外部トリガー入力、トラッキング解析を行うための外部サンプリング入力がある。
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