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導電性高分子アルミ電解キャパシター(3)―― 製造工程とリーク電流発生メカニズム中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(44)(1/2 ページ)

今回は導電性高分子キャパシターの製造工程と増加しやすいリーク電流の発生メカニズムを考え、併せてリーク電流を低減したハイブリッド導電性高分子キャパシターを紹介したいと思います。

» 2020年06月26日 10時00分 公開

 前回は導電性高分子キャパシターの代表的な特性と使用上の注意点などを説明しました。今回は導電性高分子キャパシターの製造工程と増加しやすいリーク電流の発生メカニズムを考え、併せてリーク電流を低減したハイブリッド導電性高分子キャパシターを紹介したいと思います。

導電性高分子キャパシターの代表的な構造

 導電性高分子キャパシターの主な構造には図1(a)の巻回型と図1(b)のSMDなどに用いられる積層形があり、それぞれ表1のような工程で作られます。特に図1(a)の巻回型の導電性高分子キャパシターは陽極箔の作成、裁断、組み立てまでは湿式アルミ電解コンデンサーとほぼ同一の工程であり、製造法の多くに湿式アルミ電解コンデンサーのノウハウを応用できるため急速に普及が進んでいます。
 また図1(b)のSMD用の積層形は簡単に言えば化成処理された陽極箔の両面に導電性ポリマーを結合し、このポリマーの表面に電極引き出し用のグラファイト層を生成させた構造になっています。
 図1では説明用として陽極箔を1枚で図示していますが、実際の製品では必要な容量値を得るために複数枚の陽極箔が並列に接続された構造になっています。

図1:導電性高分子キャパシターの構造

導電性高分子キャパシターの製造工程

 表1に導電性高分子キャパシターの代表的な製造工程を示します。併せて比較、参考用として湿式アルミ電解コンデンサーの工程も記載します。
表1は説明用として概要を図示したものであり、細かな点では実際の工程と異なる点もあります)

 特徴的なのは表1の太枠で示した工程1〜4が湿式アルミ電解キャパシターと共通(類似)であるという点です。この特徴によって化成処理された陽極箔などを購入している中小のキャパシターメーカーでも後工程の切り替えのみで導電性高分子キャパシターを製造できることになります。
 このことは開発力の乏しい多くの中小キャパシターメーカーでも容易に導電性高分子キャパシターを製造できることを意味します。

 また表1の行程の中では箔の切断工程3や巻回工程4などの機械的ストレスを加える工程に注意が必要です。
 キャパシターに使用する陽極箔には湿式アルミ電解コンデンサーの章で説明したようにその表面が化成処理されて誘電体としての酸化膜が設けられていますが、この酸化膜は非常に薄くできていて異物に触れて少しでも酸化膜に傷が付くと絶縁性能が大幅に低下します。
 実際、スリット裁断やリード取りつけなどの機械的加工を行えば陽極箔のアルミ地金が露出しますし、巻回作業や組み立て作業などの機械的ストレスによっても酸化膜表面にはひび割れなどの損傷が発生します。
 このような損傷を持ったまま酸化膜表面に導電性ポリマーを生成すると陽極箔のアルミ地金と導電性ポリマーが接触して短絡状態になってキャパシターとして動作しませんので何とかしてポリマー生成前に損傷部や露出部を再化成する必要があります。

 そのための工程が巻回後に設けられた工程5の再化成工程です。この段階ではまだ導電性ポリマーは存在していませんので酸を含侵して通電することによって酸化膜を補修することができます。

表1:導電性高分子キャパシターの製造工程概要

重合反応

 導電性ポリマーは本シリーズの第1回で説明したように、酸化膜の微少な凹凸に浸透できるように低分子のモノマーを含侵させた後に重合反応を起こさせてポリマー(高分子)化して作成します。

 必要な重合反応が完了すれば缶の封止などの組み立て工程へ移り、エージングで不良品を検出した後に性能検査を行って部品として完成させます。

*湿式アルミ電解コンデンサーと同じ工程については本シリーズの「アルミ電解コンデンサー」の第2回第3回第4回などを参照してください。

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