日常生活ではあまり気付かないが、交流インピーダンス測定はさまざまなところで行われている。今回の解説記事では、主に数メガヘルツまでの低周波の交流インピーダンスを測るLCRメーターについて解説する。
本記事は、計測器専門の情報サイト「TechEyesOnline」から転載しています。
日常生活ではあまり気付かないが、交流インピーダンス測定はさまざまなところで行われている。例えば家庭にある体重計についている体組成計/体脂肪計も、交流インピーダンスを測定した結果から筋肉や脂肪、骨などの体を構成する組織を推定している。最近ではスーパーマーケットなどに並ぶ魚の鮮度を調べる測定器があるが、これも交流インピーダンス測定をした結果から魚の鮮度を推定している。この他、1960年代に日本で開発された歯科用の根管長測定器や、水質を管理するための電気伝導率計も交流インピーダンス測定を応用した機器であり広く使われている。
今回の解説記事では、主に数メガヘルツまでの低周波の交流インピーダンスを測るLCRメーターについて解説する。LCRメーターは、信号源と測定対象に流れる電流と端子間の電圧の信号の大きさと位相差を求める電子回路によって構成されている。今回の解説には、LCRメーターだけではなくロックインアンプや周波数特性分析器(FRA)などを使っての低周波インピーダンス測定事例を含めて解説を行う。
記事の執筆にはLCRメーターやインピーダンスアナライザーだけではなく、ロックインアンプや周波数特性分析器をラインアップに持ち、幅広いインピーダンス測定の知見を持つエヌエフ回路設計ブロックの協力を得た。
交流インピーダンス測定は、測定対象の内部の状態を推定するために行われる。コンデンサーやインダクターも、等価回路で示された内部状態の各パラメーターを交流インピーダンス測定から推定している。
生体や材料なども同様に等価回路を決めて、交流インピーダンス測定をすることによって内部の状態を推定する仕組みとなっている。例えば体組成計/体脂肪計では、人体を下記のような等価回路と見なして、複数の周波数を使って交流インピーダンスを測定する。
交流インピーダンス測定では、等価回路をどの程度複雑にするかは目的に応じて決める。
交流インピーダンス測定はコンデンサー、インダクター、トランスなどの電子部品の測定に使われることが多いが、その他にも電池や腐食などの電気化学の分野、生体/医療/ 食品の分野、木材やコンクリートなどの材料分野でも使われている。
交流インピーダンス測定は、非破壊で測定対象の内部状態を推定できる優位性がある。得られた推定値は、他の測定方法で得られた結果との相関を知っておく必要がある。
また、交流インピーダンス測定を行うにはLCRメーターなどの測定器だけではなく、さまざまな周辺機器を必要とする場合があるため、幅広い知識が要求されることもある。
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