電気二重層キャパシター(EDLC)シリーズの最終回として、EDLCの新しい技術を紹介します。EDLCは現在でも根幹的な新しい技術が開発されるなどまだ未完の部品なのです。
前回は電気二重層キャパシター(EDLC)において重要視される特性や注意事項、寿命計算の考え方について説明しました。今回はEDLCの最終回として新しい技術を紹介したいと思います。現在でも根幹的な新しい技術が開発されるなどEDLCはまだ未完の部品なのです。
EDLCの新しい技術として分極性電極にカーボンナノチューブ(CNT)を用いた技術を取り上げます。
CNTは1991年に飯島澄男博士によって発見された材料で、六角形に配置された炭素原子(ベンゼン環)を平面上にすべて隣り合うように並べたシートを円筒状に丸めた構造をしています。
平面方向の導電率はグラファイトと同等で活性炭より良好であり、比表面積も1300m2/g程度ですので活性炭と比べても同等です。
この筒状の構造が1層のものが単層CNT(SWCNT:Singl-Walled-CNT)です。その他の構造として2層、多層構造のCNTもあります。
このように優れた特性を持つSWCNTですが実際には価格の面やSWCNTに含まれる不純物によって理論性能を発揮できていませんでした。
しかし、2004年に産総研でスーパーグロース(SG)法によるCNTの製造方法が開発されるとこれらの問題は解決されSWCNTの理論性能を発揮できるようになってきました。
また充填密度(かさ密度)が低い問題点も解決されつつあり、加えてバインダーを用いなくてもアルミ製の集電極上に直接SG-SWCNTを塗布することができる利点もあります。
新旧の電極構造の模式図を図1に示しますが図1(b)のSWCNT電極の製品は図1(a)の活性炭構造の製品に比較してパワー密度(W/l)、高温負荷寿命などの面で改善が確認されています。
電力蓄電用のデバイスとしてはリチウムイオンバッテリー(LIB)に代表される一次、二次電池と、アルミ電解コンデンサーやEDLCに代表される電気化学キャパシターに大別できます。
LIBは多くの電力を蓄えることができる反面、充電サイクル数、安全性、充電時間に難があると言えます。一方のEDLCなどはこれらの難点はないものの蓄電能力の低さに難があると言えます。図2に各種蓄電デバイスの能力分布図を示します。
横軸は電力密度、縦軸はエネルギーの密度であり、横軸の電力をどの程度持続できるかを示しています。
リチウムイオンキャパシター(LIC、あるいはLiIC)は構造的にはEDLCの正極とリチウムイオンバッテリー(LIB)の陰極の考え方を組み合わせたものと考えることができ、能力的にも図2に示すようにEDLCとLIBの中間的なものになります。
図2からEDLCに比べて電力密度(CV2/2)は高密度であり、なおかつエネルギーを長時間供給できることが分かります。
LIC(LiIC) | EDLC | LIB | |
---|---|---|---|
エネルギー密度(Wh/kg) | 中程度 | 低い | 高い |
電力密度(W/kg) | 高 | 中 | 低 |
秒単位の充放電 | 可能 | 可能 | 不可 |
内部抵抗 | 低い | 低い | 高い |
低温・高温特性 | 良い(上限70℃) | 良い | 悪い |
自己放電 | 少ない | 多い | 少ない |
放電管理 | 必要 | 不要 | 必要 |
充放電サイクル | 1万回以上 | 10万回以上 | 500〜1000回 |
安全性/可燃性 | 高い/あり | 高い/あり | 自己発熱/発火あり |
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