すでにマイコンを使い込まれている上級者向けの技術解説の連載「ハイレベルマイコン講座」。今回は、製造プロセスの異なる複数のマイコンに対して同じ条件でノイズを印加し、どの製造プロセスのマイコンが最もノイズ耐性が高いかを実験、考察してみる。
すでにマイコンを使い込まれている上級者向けの技術解説の連載「ハイレベルマイコン講座」。本記事は、2019年11月29日「ハイレベルマイコン講座【EMS対策】(2):最も効果的なノイズ対策がついに判明!? よくあるEMS対策を比較する【実験編】」の続編だ。
前回は、1つのマイコンに対してさまざまなノイズ対策を施し、EMS耐性改善効果の高い対策方法を考察した。今回は、製造プロセスの異なる複数のマイコンに対して同じ条件でノイズを印加し、どの製造プロセスのマイコンが最もノイズ耐性が高いかを実験、考察してみる。
製造プロセスが微細化すると、個々のMOSサイズ*1)が小さくなり、比較的小さいエネルギーでオン/オフするようになるため、ノイズ耐性が低くなるといわれている。しかし、MOS単体ではなく、マイコンとしてはどうだろうか?
今回は、製造プロセスの異なる複数のマイコンを使って、ノイズ耐性の評価をしてみた。
(*1)「マイコン入門!! 必携用語集(11):90nmプロセスの“90nm”ってどこの長さ?――マイコンの作り方」参照
表1に評価対象のマイコンをマイコンA〜Hで示す。一般的に市場で入手可能な64ピンQFP(Quad Flat Package)のマイコンで、なるべく幅広いマイコンを選んだ。製造プロセスとしては、180nm/130nm/110nm/90nmのCMOSプロセスで、マイコンは全部で8種類を比較した。
マイコンBは、電源電圧5.0Vおよび3.3Vで動作可能であるため、両方の場合で評価を行った。その他のマイコンは、3.3Vで評価を行った。
消費電力、回路規模および性能は、表中のマイコン内で比較した目安であり、一般的な指標ではない。例えば、マイコンBやマイコンCの性能を「低」としたが、これは表中のマイコンに比べた相対的な評価である。
図1に、評価環境の概略を示す。
ノイズの印加方法は、マイコンの端子からノイズが侵入する場合を想定し、パッケージ上で、リセット端子の対面の最も遠い位置にある汎用IO端子を出力プッシュプルでハイレベルに設定し、この端子に33pFのコンデンサーを介して、ノイズを印加する方法とした。
「リセット端子の対面の最も遠い位置にある汎用IO端子」に印加するのは、ノイズがリセットラインになるべく影響を及ぼさないように配慮したからだ。
また、出力プッシュプルでハイレベルにしたのは、PMOSをオンし、そこからマイコン内にノイズが侵入しやすいようにするためである。NMOSをオンしてもよいが、その場合ノイズがグランドへ逃げる可能性が高いので、PMOSにした。
評価用のボードは、基本的に同じ配線パターンの基板を使用し、マイコンだけを変えて実装できる形態にし、基板の条件をできる限り統一した。
正常動作判定は、評価ボードに実装されているLEDの正常点滅で行う。なお、点灯、消灯、周期の乱れた点滅は異常点滅と見なす。
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