今回は水晶振動子の動作概要や発振回路に使った場合の注意点などについて説明します。
前回は水晶振動子の概要について説明しました。水晶振動子は水晶の圧電体としての性質や機械的共振を利用しています。ですから共振の節や腹といった機械分野の用語も必要になりますので、分野をまたいで必要な勉強をされることをお勧めします。なお、前回の文中で説明は省略しましたがATカット以外にもBT〜DTカット、その他カットなどがあり、用途に合わせて使い分けられています。さらに、時計用振動子などは振動の節を上手く使った構造になっていることが分かります。
今回は水晶振動子を発振回路に使った場合の注意点などについて説明します。なお本稿では現象としての共振と振動は区別しますが、部品としての共振子と振動子は特に区別せず同じ意味としています。
水晶振動子の電気的等価回路はその共振周波数の近傍では図1に示すように、等価直列キャパシタンス(C1)、等価直列インダクタンス(L1)、等価直列抵抗(R1)が直列に、さらにこれらに電極容量(Ce)が並列に入った状態で示されます。これにより直列共振周波数(fS)と並列共振周波数(fP)が存在することになります。これらのパラメーターの中で重要なものはR1であり励振レベルを計算する時に必要になります。
水晶の等価パラメーターの値の例として、
L1 226.5mH
C1 7×10-15F
R1 22Ω
Ce 2.39×10-12F(主として空間結合容量)
を代入すると直列共振周波数fSは、
となり、CeとC1の直列合成容量は6.9796×10-15(F)ですから並列共振周波数fPは、
となります。
この2つの周波数の間では等価インピーダンスは図2に示すようにインダクタンス成分となりますので容量と組み合わせることで発振することができます。
ちなみに共振の鋭さQは、
となり、通常のLC発振回路などのQ=100程度と比較して非常に鋭い共振特性であることが分かります。
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