500V耐圧のパワーMOSFETの高温寿命試験(VGS=0、VDS=VDSS(MAX)×0.9、Ta=TCH(MAX)×0.9、1000Hr)後に漏れ電流IDSSが初期値(0.1μA以下)を大幅に上回る(数μA)劣化現象やVth(off)に変動(低下)が見られました。通常この程度のストレスでは特性値に誤差以上の変動は見られません。
なお、これらの値はカタログ値以内であるため、メーカーによっては正常と見なすかもしれませんが500Hrを超えて変動が収まらないため熱暴走の前兆と見るべきものです。
【高耐圧MOSFETの表面汚染】
チップ表面は拡散終了後に空気中の水分を吸着します。また樹脂に含まれる微量の汚染物質(Na+など)もあります。図1(a)に示すようにこれらがチップ表面に吸着すると電界に引かれて水分中を移動し図1(b)のように+イオンが負極周辺に集まります。この集まった+イオンによって対応するP層中の電子が引き寄せられP層の一部をN反転させます。
これらのイオンは電界が除去されても急速には復帰せず図1(c)のように電子はP層の表面に残り、微少ですがVthなどを変動させます。この結果、ゲート電位を0Vに設定しても漏れ電流が増加したものと推定されます。
窒化膜 | シリコン窒化膜(Si3N4)とも呼ばれ、シリコンを窒素と反応させた膜で保護膜に使われます。 |
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PSG膜 | Phospho Silicate Glasses。 リン酸ガラスとも呼ばれNaイオンの捕獲力があります。 |
JCR膜 | Junction Coating Resin。 ポリイミド系樹脂で本来はICの層間絶縁用ですが表面保護膜としても使用されます。 |
【対策】
チップの表面保護処理には窒化膜、PSG膜、JCR膜、などがありますがスピンコートができることやNaイオンの補足効果のあることからJCR膜を採用しました。
その結果、他の対策と組み合わせて漏れ電流やVthの変動を抑制することができました。
また最近の形態であるファブ(Fab)レスメーカーについては次の事例があります。
注)海外ICメーカーは「自分たちこそがICについて一番よく知っている」といった立場をとる場合が多いのですがICメーカーのIC設計者自身の経験を除けば公開された教科書的な事象以外は何も知らない場合がほとんどです。アプリケーションに関してはユーザーの方がはるかに多くの経験をしています。この事実を自覚してもらう交渉が重要です。
(海外新興メーカーにはジョブホッパー(Job-Hopper)と呼ばれる転職者が多く、1カ所で多くの経験を積むことが少ない上に経験を切り売りするのでメーカーとしてのノウハウの蓄積が遅く、検査で代用しているのが現状)
また、この事例には部品の新規採用システムの運用の問題が同時にありました。運用上の問題は次の通りです。
管理システム運営上の原因
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