UWBは、短距離無線技術として屋内ナビゲーションおよび資産追跡システムで幅広く活用されています。3.1G〜10.6GHzの周波数帯域において、500MHz以上の帯域幅で動作します。
UWBベースの資産追跡システムは、Bluetooth LEビーコンのソリューションのようにRSSIや方向検知(AoAやAoD)を測定するのではなく、かわりにToF(Time-of-Flight)を測定し、デバイスの位置を算出します。
ToF方式は、(1)信号が送信機から受信機に伝わるまでにかかった時間、(2)信号の速度の両方を測定し、デバイス間の距離を算出します。これらの値を用いて、三辺測量による算出でターゲットデバイスの位置を特定します。
UWBによる資産追跡システムには、以下のような利点があります。
一方で、UWB技術を資産追跡に利用する場合、高コスト(非実用的なコストになる場合もある)、グローバルな規格の欠如(地域ごとに異なる規制が存在する)といったデメリットもあります。
LPWAN技術は最近、特に長距離の資産追跡が必要な分野で普及が進んでいます。LPWANベースのソリューションは、一般的にアシストGPS(A-GPS)を使って位置を特定します。ですが、この手法は屋内に限定されるため、長距離の資産追跡の場合はRSSIやToFと三角測量を用いて位置を特定します。
LPWAN技術はレイテンシが大きいため、デバイスが高速で移動する場合にはあまり適しておらず、デバイスの移動速度がそこまで速くないケースに用いられることが多くなっています。レイテンシは位置計算の精度にも直接的に関係するため、LPWAN技術で十分に正確な位置を算出するのは一般的に困難です。
資産追跡への活用が考えられる無線技術として最後にご紹介したいのが、RFID(Radio Frequency Identification)です。RFIDベースの資産追跡システムでは、通常RSSI測定で場所を特定します。
RFIDタグは、「パッシブ」と「アクティブ」の2種類に分類されます。資産追跡では、一般的にパッシブではなくアクティブのRFIDタグを使用します。これは、運用範囲が広いためです。
RFIDベースの資産追跡システムでは以下のようなデメリットを考慮する必要があります。
まず重要な前提として、大半の資産追跡システムでは、それぞれの目的に合わせて複数の技術を併用しています。例えば、施設内に設置されたロケータとバックエンドサーバ間のデータ転送にはWi-Fiを使用し、エリア内の対象デバイスの位置の特定にはBluetooth LEやUWBなどの技術を用いるのが一般的です。
資産追跡で採用する技術を決める際に、重要になるのが「どれくらい正確な位置を把握する必要があるのか?」という点です。一般的に、精度が高いほどコストは高く、システムは複雑になります。これは、資産追跡システムの技術の選択における重要な判断材料となります。なお、特に総保有コストを考慮した場合、Bluetooth技術は、方向検知機能が追加されたことで他の技術よりも低コストで高い精度を実現できるケースがあります。
また、一部の資産追跡システムは、デバイス側でセンサーデータを収集するためにも使用されます。これは、追跡対象のデバイスに取り付けられた資産タグにセンサーを組み込むことで行います。こういったケースでは、技術が実用的に使用できるかを決めるにあたって、レイテンシが重要な要素になります。
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