マイコンの仕様を超える条件で使ったら、何が起きる?【後編】:ハイレベルマイコン講座(5/5 ページ)
マイコンを構成するリードフレーム、モールド樹脂などは、材質の違いから熱膨張係数が異なる。そのため、高温/高湿の状態では、それぞれの部材がそれぞれの比率で膨張し、シリコンチップに物理的な圧力をかけてひずみが生じる。半導体は、ひずみが生じると圧電効果(ピエゾ効果)によって、抵抗値などの電気的特性が変化する。そのため、論理動作やアナログ動作が異常になる。特に、抵抗値の変動はアナログ特性に大きな影響を与える。例えば、RC発振回路などの周波数は抵抗値に依存するので、発振周波数が変わってしまう。
マイコンをプリント基板に実装する際には高温になり、ひずみが生じ、そのまま実装されるため、ひずみが生じたままプリント基板に固定されてしまう。そのため、実装後の電気特性が変わってしまう場合がある。
マイコン以外の電子部品(例えば、セラミックコンデンサーなど)でも同じ現象が発生し、最悪の場合、実装後の電子部品が破壊することもある。
電子部品をプリント基板に実装する場合に発生するひずみを測定するひずみゲージという計測器があるので、実装後のひずみに問題がないか確認することを推奨する。
この不良は、常温、常湿に戻し放置するとある程度元に戻るが、マイコンがプリント基板に実装されている場合は、プリント基板から切り離し、マイコンを物理的なストレスから解放した状態で一度高温にし、常温に戻すとある程度戻る。
マイコンの論理動作が異常になっても、どの不良メカニズムに起因するかを判断するのは難しい。不良現象だけでは、見分けられない場合が多い。そこで、論理動作だけではなく、アナログ的な異常動作や、現象の可逆性を確認し、メカニズムを絞り込んでいくと、ある程度絞り込める。しきい値が変動するホットキャリア注入と可動イオンを例に挙げると、ホットキャリ注入は常温放置では戻らないが、高温放置では戻る。一方、可動イオンは常温放置でも電圧を取り除けば元に戻るため、この点でホットキャリア注入と可動イオンを見分けられる。
本記事に記載した不良現象、発生のメカニズムは一般的なものであり、必ずしも全ての不良に当てはまるものではない。そのため、あくまで参考知識として活用してほしい。
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