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2つの式の導出(2)―― Cの定義たった2つの式で始めるDC/DCコンバーターの設計(2)(3/4 ページ)

» 2023年10月30日 10時00分 公開

L、Cの材料特性

 インダクターやキャパシターを小型化するためは使用する材料の特性が重要です。特に小型化に注力した場合、磁性体や誘電体に強磁性体、強誘電体と呼ばれる材料を使用することは避けられません。
 しかしこれらの材料は原子、分子の構造に起因する特性を利用していますので材料を構成する全ての原子、分子の特性が使われた後はそれ以上、磁束や電束を増加させることはできなくなります。
 つまりLやCの値は徐々にその定義の源である比例関係を失い、その値を減少させていきます。結果としてこの現象が使用部品の特性上限値を構成します。特にインダクターの場合の電流上限値は飽和電流値I(sat)として知られています。

*電束:1クーロンの電荷から1本出るとした架空の線。「電束が増えない」ということは電荷が増えないということと同義であり、C=Q/Vで考えると2倍の電位差を与えても1.8倍の電荷しか蓄積されなければ容量Cは0.9倍に低下します。磁束の場合も同じです。

注)本連載ではLやCの詳しい特性や使用時の注意点などは説明しません。使用部品について詳しく知りたい方は各種文献、例えば 「≪中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座」の「フェライト」「アルミ電解コンデンサー」など関係する部品の章を参照してください。

初心者に推奨する回路図作成のルール

 実際の設計にあたっては回路図を書く必要が生じますが、複雑な機器になるほど多くの回路図が必要になり、設計担当者も多人数になります。
 この時、各人がバラバラな回路図の書き方(表記)をしていては見にくいだけではなく設計ミスの原因にもなり兼ねません。やはり統一された見やすい回路図は設計の第一歩です。
 ここでは私が使ってきた回路図の作成ルール(表記法)を参考として下記に記します。別にこのルールがベストというわけではなく、各自で見やすい統一ルールを作成してもらえれば良いかと思います。

見やすい回路図=ミスを見つけやすい回路図
(直感的な電気の流れを重視します)

  • 電流=電気の流れをイメージしやすい水の流れに例えます。
  • 電流は上から下へ流れます。負電位は0Vラインより下部の領域へ描画します。
  • 多くの回路図は左→右へ流れる方向で記載しますが、右→左でも関係回路図内で統一されていれば問題はありません。

プリント基板配線用回路図と別物と考える

  • 基板配線用はできる限り実体(実態)に近い方が良いのですがそのために見にくくなっては本末転倒です。まず正しく機能する機能回路図を作成してください。現在の回路図CADでは結線情報を維持したまま機能回路図から基板用実体配線図に置き換えることは容易です。
  • 回路図は機能ごとにまとめて(ブロックとして)描画します。多数個入りのICも回路図上では必要に応じて1個入りのシンボルの組み合わせに分けて描画します。
  • 回路図内の共通線などは無理やり描画せず回路内接続記号やバス配線記号を使ってシンボル化します。
  • どうしてもこのピンに最短距離で付けてほしいパスコンなどは相当する箇所から標準ではない45度引き出し線で配線を描画します。
  • FG(フレームグラウンド)は接地を表します。一方0Vは電圧基準点です。回路図CADでは両者を区別しない場合がありますので注意が必要です。特に商用線(AC100V)に接続される機器の場合は安全規格の合否に影響します。

その他のノウハウ

  • ほとんどの回路図CADでは配線の交差の点に●表記があれば接続とみなし、単なる交差だけでは接続しない表記になります。
    この場合、印刷時にゴミなどが付着すると黒点として第三者が接続情報を読み間違える可能性があります。この混乱を避けるため接続する場合は“十字”を作らないように垂直方向の上下どちらか一方の配線を部品1個分程度ズラして(┳ ┻)描画します。
    また、CADにまたぎ配線専用シンボルがあれば使います。
  • センシング線など大電流ラインに接続する信号線は接続点を間違えると大電流による配線部の電圧降下を検出できません。またパルス状の大電流ラインに信号線を接続すると誤動作の原因になります。この問題はCADの接続チェックでも見つかりませんので必要なら仮抵抗を挿入して結線を分離し、45度配線で接続点を指定します。

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