キャパシターに保存されるエネルギーJCは5式の
で計算できます。
本連載の題意から少し外れますがキャパシターを理解するために10〜20年に一度ぐらい話題になるエネルギーと電荷の保存則の話題を紹介します。
ここに充電された2つのキャパシターがあります。文字式で書いても同じなのですが具体的な値の方が分かりやすいのでC1(1μF/10V)とC2(4μF/2.5V)とします。
それぞれの電荷Q1とQ2は10μCずつなので合計の電荷Qは20μCです。またそれぞれのエネルギーはJC1=50μJ、JC2=12.5μJですので合計のエネルギーは62.5μJです。
ここでC1とC2を並列に接続すると合算容量Cは5μFです。この新しいキャパシターに合計20μCの電荷Qが与えられていますので充電電圧はV=Q/C=20μC/5μF=4Vです。
従ってこの新キャパシターCのエネルギーJCは40μJになります。
[考えよう]
この接続するという作業によって22.5μJ(=62.5μJ−40μJ)が減少していることが分かります。しかしこの条件では損失になる要素が存在しないので元々のエネルギーJC1,JC2はどうなったのでしょうか?
抵抗が微小でも存在すればジュール損になることは分かりますがここでは計算ですから放電や銅損などの損失はありません。また計算の実行可否ではなく、エネルギーの保存を考えていますので計算不可の考え方は今回の回答ではありません。
この例ではエネルギー保存則が守られていないように見えますがエネルギー保存則が破られるケースが実際にあるのでしょうか?
今回は「2つの式」の中で前回説明しなかったCの式について説明しました。
次回はエネルギーの話を簡単に説明するとともに、今まで説明した2つの式(Lの式、Cの式)を使ってDC/DCコンバーターの設計を進めていきます。
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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