おそらく電解コンデンサーに蓄積された電力が足りないことが原因だろう。つまり電力の充電側に原因が隠れている可能性が高い。まずは電解コンデンサーを充電している三相サイリスタの動作を単品で確認した。三相サイリスタの構造図を図5に示す。
図5の三相サイリスタの動作確認は簡単にできる。サイリスタのゲートからカソードに電流を流し、アノードからカソードに電流が流れれば正常だ。ゲートとP間に20mAの電流を流してサイリスタの動作を確認した。その結果T相のサイリスタだけがオンしなかった。R、S相のサイリスタやR S TからNのダイオード3個は正常に動作した。これでは三相運転でなく単相運転になってしまい、パワーが本来の70%程度にまで下がったのが動作不良の原因と思われた。
では、なぜサイリスタが破損したのか。
端子台から回路の接続を確認したところ、突入電流を防止する部品が入っていなかった。一般的には簡易に突入電流を防ぐためのNTCパワーサーミスタが使用されるが、依頼品には見当たらなかった。NTCパワーサーミスタの使用例を図6に示す。
図6はNTCサーミスタを使った突入電流の防止回路例だ。電解コンデンサーと整流ダイオードの間にNTCサーミスタ入れて突入電流を防止している。NTCサーミスタは常温では10Ω程度の抵抗があり、通電時には電流を制限し、その後流れる電流によってNTCサーミスタの温度が上昇するにつれ抵抗が常温時の10の1程度にまで下がることで稼働時には十分な電流を流すようになる。ただし、いったん電源を切ってしまうと、再通電させるにはNTCサーミスタが常温に戻るまで3分程度待つ方が良い。不具合の再発を防ぐためにもNTCサーミスタの追加を顧客へ提案し、OKの返事をもらった。続きは次回に報告する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.