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先見の明が支えたMotorola「MC68000」 PowerPCの陰でロングセラーにマイクロプロセッサ懐古録(12)(4/4 ページ)

» 2026年01月30日 14時00分 公開
[大原雄介EDN Japan]
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組み込み向けではロングセラーに

 まずMC68000に関しては、組み込み向けのローコスト版である「MC68008」が1982年にリリースされている。これはアドレスバスを20/22bit(1MB/4MB)、データバスを8bitに削減することでピン数を48/52pinに抑えた廉価版である。ただ内部的にはMC68000と一緒であった。また1985年には日立と共同でCMOSバージョンの「MC68HC000」(日立は「HD68HC000」として発売)をリリースする。動作周波数は8〜20MHzだったが、元のHMOS版の消費電力が1.35Wだったのに対し、CMOS版は8MHzで0.13W、20MHzでも0.38Wと大幅に省電力化された。

 そして1989年には「MC68302」(図5)を発表する。IMP(Integrated Multi-Protocol Processor)と名付けられたこの製品は、ISDNなどのシリアル通信向けに開発されたもので、3つのSCC(Serial Communication Controller)と2つのSMC(Serial Management Controller)、SCP(Serial Communication Port)などと、これを制御する専用のRISC CPUが追加されており、HDLC/SDLC、UART、BISYNC、DDCMP2、V.110などのさまざまな通信が可能になっていた。ちなみにRISC CPUは通常はMC68000コアからは一切見えない形になっており、ここでプロトコルのハンドリングとか通信制御が勝手に行われる形だ。これにさらにMC56000 DSPまで組み込んだのが「MC68356」(図6)となる。

図5:実はPeripheral Busにはここに出ていない576BytesのDual Port RAMがあり、ここを経由してRISCコアとの通信が可能な動作モードも存在する 図5:実はPeripheral Busにはここに出ていない576BytesのDual Port RAMがあり、ここを経由してRISCコアとの通信が可能な動作モードも存在する[クリックで拡大]
図6:端的に言えばIMP+DSP=MC68356という感じである 図6:端的に言えばIMP+DSP=MC68356という感じである[クリックで拡大]

 このMC68302のコア部分を取り出した(というか、Photo05でOn-Chip Pehripheral Bus Interface Unit以下を全部取り去った)のが「MC68EC000」である。MC68HC000同様にCMOSで製造されるが、大きな違いはStatic回路で作り直されている事で、また組み込み向けということでコプロセッサ命令が省かれており、なのでFPUの外付けは不可能になっている。こちらは広範な組み込み向けに利用された。さらにこのコアを使って開発されたのが1995年のDragonBallこと「MC68328」で、これはPalmに採用された。このDragonBall、最初にリリースされたのは16.58MHzのDragonBall EZことMC68EZ328だが、次いで33MHzのDragonBall VZことMC68VZ328、66MHz駆動のDragonBall Super VZことMC68SZ328も追加された。

 このあたりで16bitベースの製品は打ち止めとなり、代わりに開発されたのがCPU32コアである。これはMC68020をベースにCMOSベースかつStatic回路で作り直されたほか、Bitfield命令が省かれ、代わりに幾つかの命令が追加されている。このCPU32コアを利用して、MC68330/MC68331/MC68332/MC68334/MC68340といった汎用のEmbedded向け製品の他、IMPの後継として通信チャネルを4つに強化したQUICC(QUad Integrated Communication Controller)こと「MC68360」やCD-Iのエンジン向けの「MC68341」などがラインアップに追加された。

セカンドソースも多数存在

 MC68000シリーズはまたセカンドソースも多く存在した。先に述べた日立以外にも東芝、Mostek、Rockwell、Signetics、SGS-Thomsonなどがセカンドソース契約を結んで各種製品を出している。またCASTの「C68000-AHB」とかDCDの「D68000」など、IP(Intellectual Property)で提供されているものもある(CASTは既に提供を打ち切った模様だが、DCDはまだ提供中である)

 別種のコアとしては、CPU32をベースによく使われる命令のみを選び、RISCで実装した「ColdFire」がある。これは最終的にColdFire v4まで進化したものの、結局旧Freescale Semiconductor時代にv5以降の開発はホールドされてしまい、現状では新規開発などは完全に止まっている。

 やはりMotorola自身が68000系からPowerPCに主軸を移行してしまったことで、エコシステムも次第に衰退してしまったというのが正直なところであろう。それでもまだわずかながら、Embedded Marketでは利用されており、なので例えばRochesterは引き続きMC68000シリーズを提供している(参考)。これもまた息の長いシリーズ、というべきだろう。

⇒「マイクロプロセッサ懐古録」連載バックナンバー一覧

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