高速シリアルバスにおいては、差動スキューが大きな性能劣化要因となる。本稿では、スキューの発生原因、検出方法、補正方法について解説する。
つい最近まで、デジタル通信で高速にデータ転送を行うには、広帯域幅の同期バスが必須であった。従来のデジタル回路では、要求される帯域幅を満たすスイッチングレートを単一のレーンでサポートすることができなかったためである。しかし、広帯域幅の同期バスはクロック周波数を高くすることによって生じる1つの問題を抱えている。周波数が高くなり、なおかつバス幅がより広くなると、バスを構成する個々の信号線に対して、要求されるセットアップ/ホールド時間を満たすことが困難になってくるのだ。
最近になって、同期バスに代わり、超高速ビットレートのシリアルバスが使用されるようになってきた。シリアルバスでは高速のクロックを使用する。そのクロック周波数の逆数をUI(unit interval)と呼ぶ。以下で示す例では、クロック周波数が12.5GHz、つまりUIが80psであることを前提とする。
高速シリアル通信では、「差動スキュー」が重要な性能劣化要因となる。差動スキューとは、差動ペアにおける2つのシングルエンド信号の間の時間差のことである。高速シリアル通信では、クロックの回復、高周波損失の低減、ISI(intersymbol interference:符号間干渉)の削減、S/N比(信号対雑音比)の向上のために膨大な量の信号処理が行われる。スキューが生じると、帯域幅が制限され、データに依存したジッターが生じ、高周波信号による表皮効果や誘電損失を補正するためのイコライズ機能が妨げられる。
スキューはさまざまな要因によって発生する。最も一般的な要因は、送信側と受信側を接続するレーンにおいて、2つの信号線の有効長が異なることである(図1)。図2は、信号線の長さが違うことによって生じるスキューの影響を表している。図2(b)の左側のように、差動信号にスキューが発生すると、差動加算後の信号波形(右側)に影響が生じる。信号線にわずか1/8インチ(約3mm)未満の差が生じただけで、約0.2UI、つまり16psの小さなスキューが生じる可能性がある。
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