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» 2007年03月01日 00時00分 公開

ハーベスタ技術は離陸するか熱や振動から電力を生成(3/3 ページ)

[Maury Wright,EDN]
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実用事例の積み重ねが課題

 Holstの研究者らは、ハーベスタのその他の用途や種類を探求している。Gyselinckx氏は、聴覚補助機器や、人体に埋め込まれる医療機器といった医療分野にも用途があると考えている。「人体の内部にも、いくらかの温度差が存在するので、それを利用できるはずだ」と同氏は述べている。

 またGyselinckx氏は、産業分野や工場設備の分野にも潜在的な用途があると指摘する。確かに、工場であれば、熱ハーベスタを利用可能な温度差が見つかりそうだ。しかし、電力が豊富に存在する場所でハーベスタを利用する必然性があるのだろうか。これに対してGyselinckx氏は「電力(あるいはデータの転送)用に新たに配線することなく、監視ネットワークを追加できれば便利だ」と主張する。つまり、ハーベスタとワイヤレスネットワークが組み合わされることになる。

 その他のエネルギ収集技術として、Holstでは圧電ベースと静電気ベースの「振動ハーベスタ」を開発している。どちらにおいても、ハーベスタの実装に半導体製造技術を利用する方法を模索中である。

 英Perpetuum社も、振動ベースのエネルギ収集技術を提供している。参考文献*6)ではその基本概念を解説している。参考文献*7)は、同社の最新ジェネレータを取り上げた記事だ。

 もちろん、HolstやEnOcean社などの研究者らは、低消費電力回路や節電ワイヤレスネットワーク技術の問題も抱えている。Holstがプロトタイプのアプリケーションを構築した理由の1つは、こうした問題を解決することである。DC-DCコンバータ設計の詳細やオキシメーターのその他の特徴については、Holstのウェブサイト(http://www.holstcentre.com/)を参照していただきたい。

 同様に、EnOcean社はワイヤレスネットワークなどのシステムレベルの詳細設計に取り組んでいる。同社はそのワイヤレスネットワークを世界中の規格に準拠した方式とし、その帯域を、振幅変調を用いた短いデータバーストが可能な868.3MHzとした。同社によると、この技術により50μWの電力で300mの範囲に信号を送信可能だという。

 超低消費電力のLSI/部品の開発も、ハーベスタ技術における課題の1つである。米Advanced Linear Devices(ALD)社は、これまで長い間、超低消費電力のMOS FETというニッチな市場を対象としてきた実績がある。同社は現在、エネルギ収集分野でその専門性を生かそうとしている。まず同社は、わずか200mVの閾(しきい)値で動作する“ゼロ閾値MOS FET”という製品を発表した。後に同社は、そのようなMOS FETから成るPGAを開発した。現在は、低消費電力MOS FETを利用したエネルギ収集向けのモジュール群を開発中である。

 ALD社のCEOを務めるBob Chao氏によると、ハーベスタを実際の用途に適用するための秘訣は、「蓄積したエネルギを監視し、どのタイミングでプロセッサなどの回路を起動して処理を実行するのか」という制御にあるという。図2の簡単な回路図がChao氏の主張を表している。ハーベスタの蓄積エネルギを継続的に監視する回路が必須であり、その役割を担うのがALD社の技術だという。

 Chao氏によると、ALD社は2007年の初めに、3つの振動用途向けモジュールを発表する予定である。現時点では「Model A」と呼ばれているその4.5-mJ機器は、1.8V/25mAの電力を供給することができる。例えば、数時間に1回など、振動環境に応じて散発的にこの電力を供給するという。この電力量は、Zigbeeアプリケーションに一時的に電力を供給するのに適している。ほかのモジュールは、一度により多くの電力を供給可能だが、供給頻度は低くなると思われる。Chao氏によると、各モジュールの大きさは単3電池ほどとのことだ。

 またChao氏は、ALD社が同技術を、車両用の陸橋の振動駆動センサーに適用済みであると述べた。この例では、通行する車両による振動を利用する。しかしChao氏は、ALD社は契約業者にその技術を提供しただけであり、具体的にどの橋に適用したのかは現時点では公表できないとしている。

 今日のハーベスタ技術の多くは、まだプロトタイプの段階にある。しかし、今後実用的な用途が出現することは確かだ。この技術に取り組むその他の企業としては、熱ハーベスタを開発するThermo Life社や、軍事向けに振動ハーベスタを開発する米MicroStrain社、Ferro Solutions社らがある。現時点の課題は、ハーベスタ技術を実用的な用途に適用し、事例を積み重ねることだといえよう。

図2 ハーベスタに利用する監視システム 図2 ハーベスタに利用する監視システム 多くのエネルギ収集アプリケーションは散発的に発生する電力を使用する。図のような監視サブシステムは超低消費電力レベルで連続的に稼働して、エネルギの蓄積状態を監視したり、処理を行うためにプロセッサを起動したりしなければならない。

脚注

※6…Conner, Margery, "Energy harvesters extract power from light, vibrations," EDN, Oct 27, 2005, p.45.

※7…Prophet, Graham, "Vibration powers wireless sensors," EDN, Sept 1, 2006, p.26.


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