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決定版! 液晶とプラズマはここが違ういまさら聞けないデジタル家電の仕組みを解説(2/2 ページ)

» 2008年12月15日 00時00分 公開
[上口翔子,@IT MONOist]
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 店内の明るさは、一般家庭の室内照明と比べると約10倍近い明るさだといわれています。そうした環境下だと、自発光式のプラズマテレビは図3(左)のように、全体的に白っぽく見えてしまいます。

 一方、バックライトによって映像を映し出すため常に明るい映像を楽しめる液晶テレビは、明所コントラストが高いので明るい部屋や日が差し込む窓際でも鮮明かつメリハリのある映像を映し出せます。

 ブラウン管が普及していた時代には同じ特性のデバイス、条件下だったので、購入者も皆共通軸で見比べることができました。これからは店頭と実際にテレビを設置する環境の違い、そして視聴することの多い時間帯なども考慮しておくといいですね。

photophoto 図3 一般的な店頭の環境下(左)とリビング環境下(右)でのプラズマテレビの映像 リビングでは黒がはっきりと見えるが、照明の強い店頭では、白くぼやけて見えてしまう(図はイメージです)

色(色域)

 デバイスには、表現できる色の領域(色域)が決められています。中でもHDTV色域と呼ばれるデジタルハイビジョン放送を映すRGB(色の3原色)領域を100%満たしているかどうかが、1つの指標と考えられます。

 自発光のプラズマテレビに比べ、発光原理の異なる液晶テレビは、バックライトの分光特性やカラーフィルター特性などにより、色の領域を広げることが難しいとされています。

photo 図4 HDTV色域(提供:パナソニック)

 そしてもう1つ、「x.v.Color(注1)」という規格があります。これは対象のテレビなどの色再現面積が、HDTV色域の面積よりも大きいもの(ほかにも条件あり)という規格で、条件を満たした製品にはロゴが使用されています。x.v.Colorのロゴがあるかないか、という視点で比較してもいいかもしれませんが、注意点もあります。というのも、あくまでも面積としての比較なので、HDTVの色域をすべて満たしていなくても、色域の面積(大きさ)が広ければよいということにもなるのです。極端な話をすると、一部の色はHDTV色域に満たしていないけれども、ほかの色が飛び抜けて良く、結果として、色面積としてHDTV色域面積より大きければ、x.v.Color対応ということになります。よって実際に購入の際には、そのデバイスが表現できる色域(RGB)の3角形のグラフを見ておくのもいいでしょう。

(注1)動画用広色域色空間の国際規格「xvYCC」準拠製品に対して付けた名称のこと。2007年1月5日にソニーが業界内での統一呼称として提案すると発表した。

視野角特性

 携帯電話や電卓、携帯ゲーム機の液晶を斜めから見ると白っぽく見えることはありませんか? これはもともと液晶というデバイスが、パーソナルユースなものから使われ始めたもので、画面を正面から見るという使用目的だったためです。一方、大勢で見ることの多い大画面テレビは、視聴する位置(角度)もさまざまです。

 プラズマテレビは自発光なので、豆電球の光がどの方向から眺めても同じだというように、どの角度から見ても同じように見えます。

 液晶テレビは、光を遮断する(透過する)角度によって光の強さが異なります。ある方向には強く、ある方向には弱い。それにより、見え方が変わってしまいます。これは以前から液晶テレビのデメリットとしても語られていました。

 しかし、最近ではこのデメリットを克服する手法が出てきています。IPS(In-Plane Switching)というパネル方式です。これは簡単にいうと、発光原理のところで説明したブラインドカーテンの役割をする液晶分子の配列を、画面に対して垂直でなく、水平に配向することで、斜めからみても正面とほぼ同じ映像を映し出すというものです。

 IPS方式であれば、プラズマには若干劣りますが、斜めから見ても色の変化が少ないのが特徴です。ほかにもいろいろと技術開発が進んでいますが、今後も、液晶テレビは大画面化へ向けてさらなる技術革新が進んでいくことでしょう。

動画解像度

 昨今、フルハイビジョンやブルーレイ(次世代DVD)が人気ですが、それだけ“高精細”“高解像”な映像美に注目が集まっています。

 ここで注意したいのは、画素数と解像度は異なるということです。

 画素数とは、どれだけ光る点があるかという個数であり、解像度とは、どれだけ細かい描写ができるかという性能です。画素数が上がれば、一般的に解像度は上がります。このことは、デジカメの画素数でもお馴染みですね。

 しかし、デジカメとは違い、薄型テレビでは考慮すべき点が2つあります。1つは、デジカメが静止画を扱うものに対し、テレビは動画を楽しむものであるということ。2つ目は、プラズマや液晶という表示デバイス で、同じ画素数でも解像度が異なる特性を持つ、ということです。

 そうした中、次世代PDP開発センター(APDC)は、表示デバイスにかかわらず、見た目に近い動画解像度を定量測定できる評価法とシステムを開発し、一部のメーカーで表記が始まっています。

photo 図5 液晶とプラズマ、動画解像度の比較(提供:パナソニック) 液晶の動画解像度は目安です

 この動画解像度は、テレビの端から端までを人が画面内で歩く速さが平均5秒であることから、その5秒間に、人の見た目に近い尺度(単位は本、または静止画解像度に対する低下比率%)でどれだけの解像度があるかを特定の装置で解析しています。その結果が動画解像度として、一部のメーカーから公開されています。以前は応答速度などの指標もありましたが、この動画解像度で、デバイスに関係なく測定ができるということで、比較もできるようになりそうです。

 では実際に液晶テレビとプラズマテレビの動画解像度がどれくらいなのかというと、ハイビジョン液晶テレビは約300本、フルハイビジョン倍速液晶テレビは600本以上、フルハイビジョンプラズマテレビは900本以上です(パナソニックのビエラを参考)。ちなみに、ハイビジョンのプラズマテレビは720本以上となっています。画素数でいえば、フルハイビジョン倍速液晶テレビは約207万画素(=1920×1080画素)に比べ、ハイビジョンのプラズマテレビは、約105万(50Vの場合)にもかかわらず、動画解像度が高いということになります。画素数ではないという意味が分かりますよね。

 また動画解像度は、大画面であればあるほど重要といえます。小さいテレビであれば動きも小さいのでボケた映像もそれほど目立ちませんが、大画面では細かい部分を見たときに、どうしてもそうしたボヤけが目立ってしまいがちです。フルハイビジョン化は液晶が先行しましたが、それは画素数を増加させることで解像度を上げようとしたという見方もできます。

 そうしたことから液晶テレビには、絵の枚数を増やす“倍速駆動”という技術が生まれました。これは、動画ボヤケは、冒頭の発光原理のところで説明した、液晶のホールド特性が原因であり、絵を増やすことで、ホールド時間を短くし、動画ボヤケを少なくしようとするものです。現在は最大で4倍速までの駆動(2008年12月現在)が可能になっています。これは液晶テレビが本来映していた絵と絵の間の絵を作り出している(1秒間に60コマだったものを4倍速では240コマにしている)という仕組みです。

 今後さらにコマを増やすには、演算スピードや駆動スピードの向上、作成した絵の正確さ、違和感のなさなどが重要になってくるでしょう。

電気代

 液晶テレビは基本的には常にバックライトが点灯している状態なので、電気代も大きな変化はなくほとんど一定です。そして画面サイズに比例してバックライトの大きさ(本数)も拡大するので、大画面になるほど電気代も上がります。プラズマテレビも大画面化に比例して電気代が上がる点は同じですが、自発光方式なので、見ている映像や視聴環境によって電気代が変化するのが特長です。例えば、暗いシーンが多い映像や、部屋の照明を暗くして映画などを見ている際にはデバイスは小さな発光量で済みますので、電気使用量も抑えられています。

 さらに、現在プラズマテレビの発光効率は年々上昇しています。今年の1月にパナソニックから発表されたPDPの新しい技術、07年比発光効率が2倍になる「Neo-PDP技術」(注2)などの新技術も出てきています。

(注2)パナソニックが2008年1月に発表した新しいパネル技術。2007年度のプラズマテレビに比べ発光効率2倍、動画解像度1000本以上、消費電力2分の1を実現する。2009年実用化予定。

 一方の液晶テレビも、低消費電力バックライトの開発やバックライトを制御する技術などで電気使用量を抑える取り組みが進んでいます。また、バックライトの光源に従来の冷陰極蛍光(CCFL)ではなくより省電力なLEDを使い、それをブロック単位で制御するといった新技術も開発されています。

 いずれにしてもテレビの電気代というのは、使い方次第によるところも大きいので、見ていないときは消す! というエコを心掛けよう、ということは大切ですね。

おさらい

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ここまで話を聞いてみて、液晶テレビとプラズマテレビの違いは分かったかな?


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家族で見るリビング用の大型テレビなら視野角が広くて動画解像度の高いプラズマテレビ、1人で見るパーソナル向けテレビなら、中型〜小型でラインアップが豊富な液晶テレビかなぁ。ただ、日差しが差し込むなどの明るい環境で見ることが多いのなら、液晶テレビを選択するのもアリよね。結局は、それぞれのデバイスの違いをしっかり理解し、視聴環境を考えて選ぶのが大切ってことね。


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ふむふむ。それぞれの特性を少しは理解してくれたようだね。テレビに限らず、いいものを分かったうえで、自分に合った製品を購入しよう。


特別協力

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パナソニック デジタルAVCマーケティング本部

山口 耕平 氏

デジタルAV機器全般の技術特性に精通しており、今回は プラズマテレビ、液晶テレビの違いを的確に解説してくれた。「薄型テレビはデバイスごとにそれぞれ特性があるので、自分に合ったデバイスを選択してほしい」と語る。


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