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試験の観点から見たLTE対応システムの開発に必要なものとは?(4/5 ページ)

» 2010年09月01日 00時00分 公開
[Reiner Goetz/Anne Stephan/Meik Kottkamp (ドイツRohde&Schwarz社),EDN]

測定装置に求められるもの

 現在のところ、LTEのユーザー端末として商用化目前にあるのは、すべてデータ端末(USBスティックやPCカード)だと見られる。LTEの導入を推進してきたのは主にデータサービス分野であるが、一方で音声サービス向けの技術に関する議論も続いている。業界内に音声サービスに焦点を当てた検討グループ(SIG:Special Interest Group)が多数設立されたことは、データサービスと同等に音声サービスも重視されている証拠だろう。しかし、プロトコル試験/測定システムに関する限りでは、データサービスのほうが音声サービスよりも要求が多いようだ。

 LTEはPS(パケット交換)ドメインのみをサポートし、CS(回線交換)ドメインはない。一般に、パケット交換サービスと回線交換サービスは、W-CDMAのマルチコールサービスに似た方法で同時に利用できる。さらに、いったんユーザーが端末の電源を入れ、端末が登録されれば、その端末は即座にオンの状態になり、ほぼ直ちに上りリンクあるいは下りリンク上にデータ転送を要求できるようになる。そのため、すべてのレイヤーにまたがる機能試験では、測定装置には常にUプレーンを使用してデータを配信することが求められる。

 モバイル端末の性能は、エンドユーザーに直接認知される性質のものである。伝送速度や接続遅延はどれくらいなのか、受信状態が悪いとき性能はどの程度まで劣化するのか、メーカーは端末と基地局との相互接続性を保証しているのか。こうした疑問への答えを見極めてデータ端末を最適化する場合、IPレベルで測定するシグナリング手順や個々の値を確認するだけでは十分とは言えない。むしろ、どのレベルが不要な再送を引き起こしているのか、ある条件下でBLERが増加するのはなぜかといった具合に、プロトコルレイヤーのボトルネックを解析することが重要になる。プロトコル試験/測定装置には、こうした問題に対して明確な答えを提供することとともに、シグナリング手順も検証できるレベルの性能が求められている。このように、標準的なアプリケーション試験とプロトコル試験の境界はますますあいまいになってきている。

 開発段階でモジュールの試験を行う場合、試験装置は必要なインターフェースを備えていなければならない。従来であれば、RF信号でユーザー端末に接続できればほぼ十分だったかもしれない。しかし現在は、I/Qベースバンドチップにインターフェースを備えることが不可欠である。プロトコルソフトウエアは、ベースバンドチップ上またはチップのエミュレータ上で動作するからだ。物理レイヤーをエミュレーションソフトウエアに置き換えれば、ハードウエアがなくてもプロトコルスタックを完全に試験することさえ可能である。下位のプロトコルレイヤー構造の細部までアクセスすることは、要求条件のすべてを満たすためには不可欠となっている。

 事業者は段階的にLTEネットワークを開設していくと予想される。開設には、完全なハンドオーバーシグナリング試験が要求される。ユーザー端末が、異なる通信方式間をスムーズに移行できるかどうかを確認する必要があるからだ。そのため、さまざまな通信方式の基本機能を提供でき、かつLTEとの同期をサポートできるような試験/測定装置が必要になる。また、高速化のためにMIMOを採用していることから、複雑なシグナリング手順やユーザー端末の応答を試験することは必須だろう。

認証試験

 LTEのユーザー端末のGCF(Global Certification Forum)認証は2010年末ごろから始まる予定である。すでに3GPP仕様の36.521と、36.521を適用した事例の検証は行われている。ETSI(European Telecommunications Standards Institute)は試験用の記述言語としてTTCN(Testing and Test Control Notation)3を選択した。TTCN3は、W-CDMAで使用されているTTCN2を拡張したもので、C++など定番のプログラミング言語との共通点が多い。そのため、TTCN3は技術者にとっては習得しやすく、認証試験だけでなく開発段階における試験にも採用されるようになるだろう。

 GCFとPTCRB(PCS Type Certification Review Board)が実施する必須のユーザー端末認証試験のほかに、ネットワーク事業者は独自の高い基準に向けた認証試験も実施しなければならない。そうした試験では、ネットワーク基幹設備の特性と、提供可能な移動通信サービスの最適化に、より重点が置かれる。

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