ケースレーの2657A型は、±3000Vの高電圧に対応できる上、電流測定で1fAと高い表示分解能を実現したソースメジャメントユニット。SiCやGaNなどの次世代材料を使う高耐圧/低リーク/低オン抵抗のパワー半導体デバイスの特性評価や量産テストに使える。
Keithley Instruments(ケースレーインスツルメンツ)は2012年3月、最大で±3000Vと高い電圧に対応可能な直流電源/測定ユニット(いわゆるソースメジャメントユニット、SMU)「2657A型」を発売した。電圧と電流を正負両極にわたって印加(ソース)/吸収(シンク)できる4象限型で、電圧と電流を測定する機能も備えた測定器である。電圧が±3000Vのとき、最大±20mAの電流を取り扱える。すなわち±3000V時は、直流(DC)で最大60Wの電力のソース/シンクが可能だ。
このSMUでソース/シンク可能な最大DC電力は180Wで、具体的には電圧が±1500Vのときに±120mAの電流を扱える。こうした高電圧、大電力に対応したことから、Keithleyはこの新機種でSi(シリコン)を使うダイオードやFET、IGBTといった旧来のパワー半導体デバイスに加え、SiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)などのワイドバンドギャップ半導体材料を用いる、次世代の高耐圧パワー半導体デバイスの特性評価や量産テストに対応できるとしている。
同社のマーケティング担当ディレクターを務めるMark Cejer氏は、3月22日に東京都内で開催した報道機関向け発表会で、「±3000Vの高電圧と180Wの大電力を単一のSMUで対応したのは、大きなブレークスルーだ。パワー半導体を手掛けるユーザーはこれまで、SMUが取り扱える最大電力が足かせとなり、評価対象のデバイスの特性を実際に測定できる範囲が制限されていた。この新機種でその範囲が一気に広がる」と語った。同氏によると、高電圧対応のSMUで取り扱える電力は、同社既存機で1000V時に20mAの最大20W、競合他社機に至っては3000V時に4mAの最大12Wにとどまっていたという。
さらに新機種は、±3000Vの高電圧を評価対象に印加しながら、電流を最小1fAと極めて高い表示分解能で測定できるという特徴も備えている。「次世代パワー半導体は、旧来のパワー半導体よりもリーク電流を小さく抑えられるというメリットがある。しかし測定面では、その小さなリーク電流を正確に把握する手法が新たに求められる。この新機種は、それに応えることが可能だ」(Cejer氏)。
電圧と電流の測定については2つのモードを用意しており、ユーザーは評価したい特性に応じて使い分けられる。1つは、1μ秒/ポイント(1Mサンプル/秒)と高速の連続サンプリングに対応した「デジタイズ測定モード」で、電圧や電流の波形を取り込んだり、過渡特性を測定したい場合に向く。このモードでは、サンプリング速度が高い比較的低分解能の内蔵A-D変換器を使って、電流と電圧をそれぞれ測定する。
もう1つのモードは、測定の確度と分解能を最大限に高められる「積分測定モード」で、次世代パワー半導体の低いリーク電流やオン抵抗の値を測定する際に適しているという。前述のA-D変換器とは別に搭載した、分解能が高い比較的低速のA-D変換器を用いて電圧と電流を測定する仕組みだ。
この2657A型の税別価格は219万円(構成により異なる)。出荷は2012年5月以降で、納期は1カ月以内とする。
なおKeithley Instrumentsは、大手コングロマリットのDanaherに2010年に買収されている。米国本社であるKeithley Instrumentsは法人としては既に消滅しているが、現在はDanaherが同じく買収したTektronixの1つの事業部門として運営されており、ブランドとしてのKeithley Instrumentsは継続している(関連記事)。
日本法人であるケースレーインスツルメンツについては、Tektronixの日本法人テクトロニクスとDanaherが別に買収していたFlukeの日本法人であるフルークが統合して誕生した新会社のTFFに2012年4月1日付で合併する。既にTFFが入る東京都品川区のオフィスに移転済みであり、この合併によってユーザー対応に影響が生じることは無いという。
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