スペアナとベクトルネットアナなどからなる「FieldFoxシリーズ」の新機種群は、最大26.5GHzのマイクロ波帯に対応した上、ダイナミックレンジやノイズ、パワー確度などの基本性能を大幅に改善した。衛星通信やレーダーなどのフィールド試験に加えて、研究開発の現場で手軽に利用できる補助的な測定器としての需要も見込む。
アジレント・テクノロジーは2012年9月、バッテリ駆動の携帯(ハンドヘルド)型高周波測定器「FieldFoxシリーズ」を拡充し、最大26.5GHzのマイクロ波帯の測定に対応する新機種群を投入した。合計14機種を用意している。具体的には、ベクトルネットワークアナライザ「N9920Aシリーズ」とスペクトラムアナライザ「N9930Aシリーズ」のそれぞれについて、測定周波数の上限が9GHz、14GHz、18GHz、26.5GHzと異なる4機種を取りそろえた他、両方の機能を兼ね備えた機種(同社は「コンビネーション・アナライザ」と呼ぶ)「N9910Aシリーズ」で、測定周波数の上限が同様の4機種に加えて、4GHz、6.5GHzの2機種を供給する。
これら新機種群の特長は、FieldFoxシリーズの従来機種で6GHzにとどまっていた測定周波数の上限を26.5GHzまで高めた他、測定確度を「据え置き(ベンチトップ)型の測定機と同等に利用できるレベル」まで改善したことである。衛星通信やRF/マイクロ波の基幹通信、レーダーシステムなどのフィールド試験に加えて、研究開発の現場で手軽に利用できる補助的な測定器としての需要も見込む。
各機種とも、重量をバッテリ込みで3.0kgに抑えた他、冷却用のファンを搭載しない設計で防塵・防滴性を確保し、耐久性と耐候性を高めた。バッテリ駆動時間は3.5時間以上だという。
ネットワークアナライザは、基本構成でSパラメータの伝送および反射(S11とS21)を測定できる。オプションで、フル2ポート(S21、S11、S12、S22)のSパラメータ測定や、ケーブル/アンテナ解析機能(VSWR測定)、パワーメーターを追加することも可能だ。基本特性としては、18GHzまでの範囲で94dB、20GHzにおいて87dBと高いダイナミックレンジを確保した他、トレースノイズについては±0.004dBに抑えた。「ハンディタイプのネットワークアナライザとしては業界最高の性能だ」(同社)と主張する。
スペクトラムアナライザは、基本性能である位相雑音を1GHzの10kHzオフセットで−111dBc/Hzと低く抑えた。「レーダーや狭帯域無線など、大信号の近傍にある微小な信号を測定するのに最適だ」(同社)という。さらに、オプションで追加できるパワーメーター機能の測定確度が全周波数範囲にわたって±0.5dBとパワーメータの専用機並みに高いことや、やはりオプションで、マイクロ波帯の信号発生器の機能を搭載可能といった特長もある。なおこの信号発生器の機能は、スペクトラムアナライザ用の信号源とは別に本体に内蔵している信号源を使ったものなので、スペクトラム解析の機能と独立に信号発生の機能を利用することが可能だ。
コンビネーション・アナライザは、基本性能については上述のネットワークアナライザとスペクトラムアナライザそれぞれと同じ。ただし基本機能として備えるのはケーブル/アンテナ解析機能であり、スペクトラムアナライザやネットワークアナライザの機能はオプションとして搭載する必要がある。
価格は、9GHzの基本モデルで162万3600円(税別、以下同)から。例えば26.5GHzの機種では、スペクトラムアナライザが250万円を超える程度、ネットワークアナライザが350万円を下回る程度、コンビネーション・アナライザ(オプション搭載機)が450万円を超える程度になる。2012年9月3日付で出荷を開始した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.