パワー半導体をもう少し詳しく見てみると、4つの働きがある。
パワー半導体は、これら4つの働きのうち、いずれか1つの働きをして、電力を制御してマイコンやモーターなどに電力を供給する。
この4つの働きの中で、よく耳にするのがインバーターだろう。エアコンや冷蔵庫、洗濯機などのカタログなどには、製品の省エネ性をアピールする要素として「インバーター搭載」などとうたっている場合が多い。
では、インバーターエアコンと、そうでないエアコンはどう違うのだろうか。
インバーター非搭載のエアコンでは、エアコンを動かすモーターをフル回転させるか、止めるかのどちらかしかない。言い換えれば、モーターのオン/オフしかできず、極端な動作で無駄な動きが増える。一方、インバーターを搭載していれば、モーターの回転数を自由に変えることができ、無駄な動きが減らせ省エネ化できるのだ。
インバーターがモーターの回転数を自由に変える仕組みは、モーターへの電源供給を高速にオン、オフし、そのオンとオフの時間の割合を自在に変えて、回転を制御している。インバーターも突き詰めると、モーターをオン、オフしているにすぎない。
このオン、オフを行うことをスイッチングと呼び、このスイッチングを行うのがパワー半導体だ。インバーター以外のコンバーターや周波数変換、レギュレーターなどでもパワー半導体のスイッチング機能を使って行う。
スイッチングを行う半導体は、スイッチング素子/スイッチングデバイスとも呼ばれ、パワートランジスタとサイリスタがある。またスイッチングを行わないパワー半導体としてダイオードも存在する。
数あるパワー半導体の中でも、パワートランジスタは最も応用範囲が広く、技術開発が盛んなデバイスだ。そのパワートランジスタには、主に(1)バイポーラトランジスタ(2)パワーMOSFET(3)IGBTの3つがある。
バイポーラトランジスタは3つのパワートランジスタの中で、最も構造がシンプルだ。構造がシンプルなこともあり、より大きな電力を扱えるという利点がある。ただスイッチング動作するために必要な電力(消費電力)が大きく、スイッチング速度も比較的遅い。
パワーMOSFETは、CPUなどのICにも似た構造であり、3つのパワートランジスタの中で最も高速なスイッチングが行える。ただ、バイポーラトランジスタに比べ、大きな電力が扱いにくい。なお、MOSFETは、metal-oxide-semiconductor field-effect transistorの略で、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタと訳される。
IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略で、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタとも呼ばれる。その構造は、バイポーラトランジスタとパワーMOSFETを組み合わせたもので、大きな電力が扱えると同時に高速スイッチングが行えるという利点を持つ。ただし、その構造は複雑だ。現在、比較的小さな電力ではパワーMOSFETが、比較的大きな電力領域ではIGBTが主に用いられる。
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