部品の配置は、温度管理、機能、電気ノイズを考慮して決めます。部品の配置は、はじめに部品の接続を考慮し、おおまかに配置します。部品1つ1つの位置を決めたらレビューを行い、配線しやすくパフォーマンスが出せるよう調整し最適化を行います。
多くの場合、この段階でサイズとコストを考慮して部品配置とパッケージのサイズを考え直し、変更を施します。10mW以上を消費する部品、または10mA以上が必要になる部品は、大きな熱や電気が加えられても十分なパワーがあると見なされます。影響を受けやすい信号ラインはノイズ源から保護するためにプレーンでシールドし、インピーダンスを常に制御した状態にします。
電源管理用部品は、熱流のためにグランドプレーンまたは電源プレーンを利用します。電圧降下を考慮し、高電流が流せるよう接続を行います。ある層から別の層に高電流が流れる経路がある場合は、各層に2〜4つのビアを用います。複数のビアを置くのは、信頼性を向上させ、抵抗損失と誘導損失を減らし、熱伝導を良くするためです。
ICから発生する熱はICからPCBの銅層に伝わります(図3)。基板全体が同じ温度になるのが理想的な熱設計です。銅の厚さ、層の数、熱の伝搬経路、基板の面積が、部品の動作温度に直接影響を与えます。
動作温度を下げるには、複数のビアを介して熱源と直結するグランドプレーンまたは電源プレーン層を増やすことです。効果的な放熱対策と高電流の経路を作れば、対流によって熱伝導を最適化できます。熱を均等に拡散するために熱伝導率の高いプレーンを使えば、熱を大気中に逃がすための面積を確保でき、温度を劇的に下げられます2)(図4)。熱を均等に拡散することで、次に示す公式で表面温度を計算することができます。
P=(heatConvection)×面積×(ΔT)
ただし:
P=基板上で消費した電力
HeatConvection=周囲の条件から算出する対流定数
面積=基板(X軸×Y軸)
ΔT=表面温度−周囲温度
部品を配置する順序は、コネクタ、電源回路、電流検知アンプなどのような高感度回路・精密回路、重要回路部品、残りの部品の順とします。PCBの各部分の回路図を作成してから、接続します。回路配線の優先順位は、電力レベル、ノイズ感度、またはノイズ生成やルーティング能力に基づいて選びます。
基本的に、10〜20mAが流れるトレースは10〜20ミルのトレース幅とし、10mA未満の電流が流れるトレースは5〜8ミルとします。高周波(3MHz超)の信号は高インピーダンスのノードと配線する際には十分に注意してください。
設計者はレイアウトをレビューし、全ての設計上の制約に対して回路が最適になるまで、物理的な配置と配線経路を繰り返し調整する必要があります。層の数は電力のレベルと複雑さに応じて異なります。電源の信号とプレーンの配線、グランドへの処理により、基板が意図した通りに動作するかどうかが、決まります。
最終レビューでは、高感度のノードと回路がノイズ源から適切にシールドされているか、ピンとビアの間にソルダーレジストがあるか、シルクスクリーンはきれいにまとまっているかを検証します。 複数の層をスタックして使用する場合は、部品が実装される層の下の層をグランドとして使い、電源プレーンはその他の層を使用してください。Z軸の中点に対して基板のバランスを取るようにして層をスタックします。
レビュー中にPCB設計者が見つけたあらゆる懸念事項を検討し、PCBを修正してください。基板が完成するまで、レビューを繰り返すごとに変更点のリストを作成して、検証します。レイアウトの全てが終了した段階で、設計ルールチェッカー(DRC)を使って設計の間違いをなくすようにします。
DRCで分かるのは、監視するようプログラミングされている間違いだけであり、個々の設計によってDRCルールのセットが異なることがよくあります。最低でも、パッケージ間のスペース、未接続ネット(回路の各ノードを特定する名称)、短絡ネット、エアギャップ違反、ビアがはんだパッドに近すぎないか、ビアが互いに近すぎないか、垂直クリアランスの違反を、設計ルールチェックの対象にすべきです。
間違いのない設計にするために、先に挙げた項目以外にもさまざまなDRCルールを設定できます。例えば、「クリアランスは5ミル以上を保つ」「ビアは表面にあるパッド内に配置しない」「ソルダーレジストを全てのはんだ位置の間に置く」などです。
往々にしてPCB設計内容がコストを左右するため、PCB製造でコストを増加させる要因は何かを正しく理解することが重要です。一般的な基板は2〜4層で、直径10ミル未満のドリル穴がなく、エアギャップとトレース幅は最低5ミルでしょう。厚さは0.062インチ、標準的な基板材料であるFR-4を用いて銅パッドの重さは1オンスが一般的です。この一般的といえる基板よりも、「層数が多い」や、「基板が薄い/厚い」といった基板のコストは高くなります。また「ビアインパッドやブラインド/ベリードビアを用いる」「短納期での製造発注」なども全てコストを大幅に上げる原因になります。
PCBの設計を始める際は、製造性を考慮してPCBを設計し、PCB工場に定期的に連絡を取り、製造能力とコスト削減方法を確認する必要があります。
PCBの設計は複雑になりがちですが、テクニックと実践により、より良い基板を設計することは十分に可能です。これらのガイドラインに従い、必要な場合はさらに調査を行えば、エンジニアは自分のスキルを向上し続けることができ、設計の初心者は期待を上回る高品質なPCBの作り方を学ぶことができます。
1)Cohen, Patricio, Concepts and terminology used in Printed Circuit Boards (PCB), Electrosoft Engineering, Web, May 25, 2013.
2)Mauney, Charles, Thermal Considerations for Surface Mount Layouts, Texas Instruments, Web, May 13, 2013.
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