小型モーターを含むシステムを開発する際には、速度の調整が可能な双方向モーター制御回路が役立つ。今回は、一般的なデバイスを使用し、低コストでありながら小型で、柔軟性が高く、すぐに活用できる双方向モーター制御回路の例を紹介する。
小型モーターを含むシステムを開発する際には、速度の調整が可能な双方向モーター制御回路が役立つ。図1は、その制御回路の例である。この回路は、一般的なデバイスを使用している。デバイスの許容範囲や定格値は、電圧と電流、電力の要求値に収まっていればよく、それほど重要ではない。特徴は、低コストでありながら小型で、柔軟性が高く、すぐに活用できることである。
75mm×100mm程度のプリント基板を使って、1時間以内に作成できる。高さは12mm以下と低い。
トランジスタを使ったHブリッジ*)を採用することで、双方向の回転を可能にした。チョッパー回路を使ってHブリッジの上部を制御し、これによって速度調整もできる。一方向に回転させるためには、入力(IN CW、もしくはIN CCW)のどちらかを0Vに接続する必要がある。スイッチか、トランジスタ、オープン・コレクタのTTL回路を使って接続すればよい。入力が共にハイレベルの場合は、トランジスタQ2とQ4はオンにならず、モーターは止まる。モーターは、パルス動作をしているトランジスタQ1とQ3からわずかなブレーキ作用を受ける。
*)4つのトランジスタ(スイッチ)を使って、H型に接続したブリッジ回路。中央にモーターを接続し、トランジスタのオン/オフのタイミングを工夫することで、印加電圧の向きを反転させることができる。すなわち双方向の回転が可能になる。
一方の入力がローレベル(0Vに接続)になると、対応するトランジスタQ2とQ4は導通状態になる。その際、ベース電流はR1とR4によって制限を受けることとなる。Q1とQ3のベースへのパルス信号は0Vに短絡したため、Q1とQ3は遮断される。これらの反対側にあるQ4とQ2は導通状態にはならないが、Q3とQ1は、D2とR6、もしくはD1とR5を介してチョッパーからパルス信号を受け取る。すなわちトランジスタQ5がオンになるたびに、Q3とQ1もオンに変わる。
チョッパー回路には555タイマーであるIC1を採用し、これを無安定マルチバイブレーターとして接続した。定電圧ダイオードD7と抵抗R10は、IC1への供給電圧を最大許容電圧である15Vに制限する役目を果たす。タイミング・コンデンサーC2は、抵抗R11とポテンショメーターR12の上側、ツェナー・ダイオードD7を介して充電され、ポテンショメーターR12の下側を介して放電される。R12の接点位置をβとすると(中央:β=0.5、最下部:β=0、最上部:β=1)、充電時間はTON=0.693C2[R11+R12(1−β)]、放電時間はTOFF=0.693βC2R12になる。
従って、チョッパー回路の周期は、TON+TOFF=0.693C2[R11+R12(1−β+β)]=0.693C2(R11+R12)となる。IC1の3番ピンの出力信号は、周波数がほぼ固定でデューティー比を調整できる方形波である。図2(a)は、ポテンショメーターの接点が最下部にある場合(β=0)、図2(b)は最上部にある場合(β=1)である。
トランジスタQ5とQ6は、Q1とQ3のベースを駆動する電圧レベルに合わせてあり、555の出力(3番ピン)がハイレベル(TON)のときだけ導通状態になる。この導通状態を使って回転速度を調整する。
ダイオードD3〜D6は、誘導電圧のピークからトランジスタQ1〜Q4を保護するために挿入した。ヒューズF1は、過電流から回路全体を保護する役割を果たす。Vccと接地の間に入れたコンデンサーC3は、電流のピークをフィルタリングするエネルギー・タンクのように振る舞う。
紹介した回路は、小型電動工具の試作品の試験や調整に使った。速度やギア比を決める際に役立った。なお、使用するトランジスタは、供給電圧とモーター電流に対応できるダーリントン型が望ましい(モーターが高インダクタンスであることを忘れてはならない)。R10とツェナー・ダイオードは、供給電圧Vccに応じて選択する必要がある。
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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。
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