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LEDの異常を検出できるドライバー回路Design Ideas ディスプレイとドライバ

今回は、LEDの異常状態検出機能を備えたLEDドライバー回路を紹介する。

» 2014年12月04日 11時32分 公開

 LEDは各種の表示装置や、フォトカプラーの発光素子として広く使われている。用途によっては、LEDは主装置から離れた場所に設置されることが多い。具体例としては、自動車のダッシュボードに組み込まれたインジケーターや工業用の光センサーが挙げられよう。こうした用途では、LEDがきちんと動作しているかどうかをLEDのドライバー回路側から監視できるようにしておく必要がある。

 図1は、LEDに異常が発生していないか、すなわち、開放状態や短絡状態が発生していないかどうかを監視する機能を備えたLEDドライバー回路である。4個のトランジスタと6個の抵抗だけで構成した。1個のLEDを一定の電流で駆動するほか、制御信号VCONTでLEDの点灯と消灯を切り替える機能も備えている。VCONTの論理レベルがハイレベル(5V)のときはLEDが消灯し、ローレベル(0V)のときはLEDが点灯する。

LEDの異常を検出できるドライバー回路 図1 LEDの異常を検出できるドライバー回路
LEDの異常状態検出機能を備えたLEDドライバー回路である。LEDの開放や短絡状態を検出すると、出力信号の論理レベルを変化させ、異常状態の検出を通知する

 ほとんどのLEDでは最小でも1.2Vの順方向電圧降下が生じる。LED回路に異常がなければ、この電圧降下によってQ3に適当なベース電圧が印加され、Q3はオン状態になる。Q3がオンするとQ2にコレクタ電流が流れる。Q2が動作することでQ4にもバイアス電圧が供給される。するとQ4がオンして、異常検出信号(FAULT)の出力論理レベルがハイレベルになる。LEDが正常に動作している限り、異常検出信号はハイレベルを維持し続ける。

 LEDに異常がないとき、Q2とQ4はともにオン状態である。従ってQ1のベース電位は、電源電圧(VS)からトランジスタ2個のベース‐エミッタ電圧降下(VBE×2)程度低い値になる。またR1にかかる電圧はトランジスタ1個のベース‐エミッタ電圧降下(VBE)程度である。ここでVBEを約0.6Vとすれば、R1が68Ωであることから、Q1によってLEDに供給される電流は約10mAと計算できる。R2の値はLEDの抵抗成分と比べて十分に大きいので、Q1のコレクタ電流がR2を介してQ3のベースに流れ込むことはない。

 LEDに異常が発生し、開放(オープン)状態になると、Q1のコレクタから見た負荷はQ3のベースに直列接続されたR2だけになる。R2の抵抗値はR1よりもはるかに大きいので、Q1は飽和してエミッタ電流がほとんど流れなくなる。このためR1にかかる電圧は約20mVまで低下し、Q1とQ2のエミッタの電位は電源電圧(VS)にほぼ等しくなってしまう。この状態ではQ4のベースに十分なバイアス電圧が供給されず、Q4はオフ状態になる。この結果、異常検出信号(FAULT)がローレベル(0V)に変化して異常状態を通知する。

 一方、LEDが短絡(ショート)状態になった場合は、Q3が直ちにオフし、Q2のコレクタ電流を遮断する。このときQ2のベース‐エミッタ接合はダイオードのように機能し、主にR3とR4の比とQ2のVBE電圧降下で決まる電圧にQ1のベース電圧をクランプ(制限)する。R4の値はR3より小さいので、Q2のエミッタ電位がVSに近づく。この場合もQ4がオフ状態になり、異常検出信号をローレベルに変化させて異常状態の発生を通知する。

 回路中の抵抗値を図1のように選んでおけば、Q1のベース電圧は約4Vにクランプされる。このためR1にかかる電圧は200mV〜300mV程度である。従って、LEDが短絡状態に陥ったときの電流は正常状態のときの1/3未満に抑えられ、無駄な電力を消費せずに済む。

 LEDが正常に点灯している状態では、Q1にはQ2よりも大きな電流が流れる。このためQ1のVBE電圧降下はQ2よりもやや大きくなる。この結果、R1にかかる電圧は、標準的なダイオードの順方向電圧降下の値よりいくらか小さくなる。従ってLEDの駆動電流を所望の値に設定するためには、実験によってR1の抵抗値を適当な値に設定する必要があるだろう。

 R3は、LEDを点灯させている状態(VCONTがローレベルのとき)でQ1とQ2に適当なベース電流が流れるように選ぶ。実際に回路を試作して実験した結果、R3が39kΩのときにうまく動作した。ただし、LEDを駆動する電流の大きさやQ1とQ2の電流利得によっては、もっと値が小さい抵抗が適切な場合もあるだろう。

 LEDが点灯しているときは、Q2とQ3は完全にオン状態になる。このため、各トランジスタのコレクタ電流を最大定格電流以下に抑えるには、R5の値をある程度大きくしておく必要がある。ただしR5を大きくし過ぎると、R4とQ4のベースに流れる電流をQ2が供給できなくなってしまう。まずR5をR4の4〜5倍程度にしておいて、徐々に大きくしていくのがよい。

 図1では電源電圧を5Vとした。回路中の抵抗値の計算をやり直せば、異なる電源電圧で動作させることも可能である。Q1が飽和しない程度のエミッタ電圧を確保できる範囲であれば、低い電源電圧で動作させられる。ただしLEDとして青色LEDや白色LEDを用いる場合には、順方向電圧降下が比較的大きいため、注意が必要だ。


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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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