スイッチング電源の多くは、電圧帰還によって出力を安定化するPWM(パルス幅変調)制御方式を採用している。タイマーICを用いれば、PWM制御回路を安価に実現できる。
スイッチング電源の多くは、電圧帰還によって出力を安定化するPWM(パルス幅変調)制御方式を採用している。タイマーIC「555」を用いれば、PWM制御回路を安価に実現できる。図1は、このICを使って実現したPWMスイッチング電源回路である。回路の設計に必要な計算式は1つだけだ。
この回路では2個の555を用いる。1つは非安定状態のIC1である。このIC1がもう1つの555であるIC2に対してトリガー信号を出力する。発振周波数は約60kHzに設定した。デューティー比は高い。
IC1はIC2にトリガー信号を出力するために、出力を2.5μsと短い時間だけ低電圧状態にする必要がある。これ以外の期間は高電圧状態を保持させる。
PWM回路であるIC2はパルス幅が最大約85μsとなる。このパルス幅は、帰還回路の電圧を制御することで短くできる。
タイマーIC「556」や、その他の連続してトリガー信号を出力できるICを用いれば、さらに使用するICの数を削減できる。この回路の入力電圧は1.5×VOUTに加えて余裕度(マージン)が必要となる。このため出力電圧が5Vのときには、9Vを入力する必要がある。CMOSで製造したICと、容量が小さいタイミング用コンデンサーC1、C2を使えば、動作時の消費電流を抑えることができる。
ツェナー・ダイオードで構成した定電圧回路をIC1とIC2に付加することで、30V以上の入力電圧に対応できるようになる。入力電圧はツェナー・ダイオードの最大電力によって上限値が決まる。ただし、IC1とIC2には5mA〜10mAの電流を供給する必要がある。
FETのQ1はオン抵抗RDS(ON)が低く、しきい値電圧VGSが低い。さらに耐圧は40V以上である。ツェナー・ダイオードD1は、大電流が遮断されたときに発生する電圧スパイクに対してクランプ動作を行うことで回路を保護する。この電圧スパイクは大きな磁界がインダクターに残留することで発生する。
D1がクランプ動作する電圧は回路全体の出力電圧値によって決まる。例えば、5Vを出力する回路に対しては5.6Vのツェナー・ダイオードを用いるとよい。
IC3とR1、R2、V1(IC3の基準電圧源)で、回路全体の出力電圧を決定する帰還回路を構成する。出力電圧はVOUT=V1(1+R1/R2)で求まる。基準電圧源としては米National Semiconductor社のシャント・レギュレーターIC「TL431」などがある。このICを使えばV1を1.25Vに簡単に設定できる。入力電圧が9V〜40Vのときに、電流が1.5Aで電圧が5Vの出力を得られる。
12V以上の入力電圧を扱うときは、10Vのツェナー・ダイオードをIC1とIC2の両方の入力に挿入する必要がある。ツェナー・ダイオードを追加しても効率はわずかしか下がらない。入力が12Vの場合、出力電圧が5Vで出力電流が1.5Aのときに、効率は約70%である。ツェナー・ダイオードを追加して入力を40Vに変更した場合、効率は65%に下がる。しかし出力電流が小さくなると、ツェナー・ダイオードの効率に対する影響が大きくなってしまう。例えば、出力電流が50mAならば、効率は約50%にまで低下してしまう。
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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。
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