どのような技術にも制限があり、ゾーントリガー機能も例外ではない。ゾーントリガー機能がポスト処理技術であることは述べたが、2つの望ましくない影響がある。
1つ目は、ポスト処理が追加されることにより、オシロスコープ全体の更新スピードが低下することである。ゾーントリガー機能により、更新スピードが100分の1まで落ち込むことも珍しくない。これにより、オシロスコープの操作性が犠牲になり、使いづらいと感じることもあるだろう。
2つ目の制限は、ポスト処理の追加によりオシロスコープのデータ捕捉が行えない時間がさらに長くなることだ。ゾーントリガー機能の表示は、繰り返し信号の場合にのみ有効となる。ゾーントリガー機能の処理をするために必要な時間は、オシロスコープのメーカー、使用しているメモリの量、ゾーントリガーのタイプ、対象となるソース(入力チャンネルか演算結果なのか)に大きく依存する。つまり、従来のハードウェアトリガーはまれにしか発生しない非反復イベントの捕捉を確実に行う唯一の方法であり、ゾーントリガー機能はこうした使用には適していないということである。
既存のオシロスコープか新規購入予定のオシロスコープにゾーントリガー機能の追加を検討しているなら、比較検討する際にいくつかのポイントを押さえる必要がある。
一般的に、ゾーントリガー機能は数百MHz帯域かそれ以上で、十分な処理能力を有したオシロスコープに搭載されている。比較の際は、検討しているメーカーのオシロスコープがゾーントリガー機能を搭載しているかどうかを最初に確認する。
ゾーントリガー機能をサポートしているオシロスコープの場合、オシロスコープのデモ製品は評価用にオプションを有効化しているケースがほとんどである。既存のオシロスコープに対しては、各メーカーがお試しのライセンスを提供している。
メーカー間におけるゾーントリガー機能の1つの大きな違いは、「どの波形に対してゾーントリガーが動作するのか?」である。全てのゾーントリガー機能は、アナログチャンネルからの入力波形を、ゾーントリガー機能のソースとして使用できる。
一部のメーカーでは、ゾーントリガー機能を演算波形に対して使用できる。一般的に、演算波形は電源解析や差動信号の評価に使用される。既存のハードウェアトリガー機能では、演算波形の結果に対してトリガーをかけることができない。演算波形に対してゾーントリガーが使用できることで、解析効率が飛躍的に向上する可能性がある。
例えば、FFT演算波形に対してゾーントリガーを設定できるかどうかの確認が挙げられる。オシロスコープのハードウェアトリガー機能は時間領域の信号に対して設定できるが、周波数領域の信号に対しては設定できない。これに対してゾーントリガー機能は、周波数領域でトリガーの設定ができる唯一のソリューションになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.