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オシロスコープの「ゾーントリガー」機能って何?5つの代表的な質問に回答します(2/4 ページ)

» 2016年07月19日 11時30分 公開

ゾーントリガー、なぜ使うのか?

 ゾーントリガーは、図形によりトリガー条件を設定できる。使い勝手の観点からいえば、従来のハードウェアトリガー条件を使用した場合と比較して、よりシンプルにトリガー条件を設定可能だ。さらに、ゾーントリガー機能は、従来のトリガーでは分離することが不可能な特定の不具合信号やパターンを、簡単に分離できる。

 例えば、DDR(Double Data Rate)メモリの読み出しや書き込みサイクルの波形は、わずかな差異しかない。このため、読み出しと書き込みサイクルを分離することは、従来のオシロスコープのトリガー機能では不可能だが、ゾーントリガー機能を使用すれば簡単に分離できる。ユーザーは、読み出しと、書き込みサイクルで異なる波形の一部に小さな四角いゾーンを描き、その部分を「横切る」あるいは「横切らない」と設定するだけで、オシロスコープの画面には観測したいサイクルのみを表示できる。

 ゾーントリガー機能は、非単調エッジを持つ信号の捕捉表示にも使用できる。クロックの周期ごとにゾーンを描き、条件を指定することで、1と0の特定パターンを表示させることも可能である。これ以外にも、ゾーントリガー機能は、シリアルバスパケットを図形により簡単に分離できる。例えば、USBがデータパケットを送信する部分にゾーンを描き、データパケットのみを表示させることなどが挙げられる。

どのような波形に使用できるのか?

 従来のオシロスコープが搭載しているハードウェアトリガー機能は、アナログチャンネルかデジタルチャンネルのどちらか一方のみに動作する。ゾーントリガー機能は、ポスト処理なので、技術的な観点からいえば、幅広い種類の波形に対して利用できる。

 最新のゾーントリガー機能は、演算波形に対しても使用可能だ。ユーザーは、演算結果やFFT波形に対してゾーンを定義できる。この進歩は、ハードウェアベースのトリガー回路だけでなく、前世代のゾーントリガー技術では見られないユニークな機能を提供する。例えば、周波数領域において側波帯のスペクトラムが、特定の電力レベルを超えた信号のみを分離すために、ゾーントリガー機能が使用できる。

図2:最新のゾーントリガー機能は、オシロスコープのチャンネル入力波形だけでなく、演算波形に対しても設定できる。この例では、「R&S RTO2000」にシングルエンドパッシブプローブを2本接続し、USBのD−とD+信号の測定結果を画面上部に表示している。上記2本のシングルエンド信号を演算機能を使用し、差動信号として画面の下に表示。ゾーントリガー機能は、この演算波形に対して設定できる (クリックで拡大)
図3:この例では、ゾーントリガー機能を周波数領域(FFT演算結果)のスペクトラム波形に対して設定している。オシロスコープは、側波帯のパワーレベルがある規定値を超えた場合にのみ、スペクトラム波形を捕捉して画面に表示している (クリックで拡大)

 また、電流プローブや電圧プローブを使用して、乗算により時間領域で電力を求めている場合、ユーザーは電力が所望の値よりも大きい場合にのみ、その波形をオシロスコープの画面に表示できる。演算波形に使用できることによって、ゾーントリガー機能が非常に力強くになり、図2と図3に示すような使い方が可能になる。

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