その他の違いとしては、ゾーントリガー機能を実行した時に要する時間になる。これは、特定のゾーントリガー機能の設定に対する波形更新レートの測定で比較できるが、ゾーントリガー機能は、まれにしか発生しないイベントを見逃すことがある。
これに対して、ハードウェアトリガー機能は、トリガーイベントを確実に捕捉する唯一の方法である。このため、波形更新レートの低下に伴うデータの取りこぼしは、それほど重要な比較ポイントではない。むしろ、波形更新レートの低下に伴う操作性の低下や、波形の見え方が著しく損なわれることへの影響が大きい。
上記以外の比較項目は、オシロスコープのメーカーによって異なる。一部のメーカーは、ゾーンの形状として四角形のみが用意されており、他のメーカーでは任意のゾーンの図形を描画できる。四角形は、ほとんどの場合において十分だが、任意のゾーンはより詳細なイベントの切り分けに対して非常に有効である。
また、ゾーンサイズ、形状、ソース、タイプの変更をどれだけ簡単に行えるのか? ゾーンの追加や削除のやりやすさを各オシロスコープで確認することが重要だ。実際に使用すると、これらの作業は購入前に想像していた以上に頻繁に行われるからである。
これまで述べてきたように、ゾーントリガー機能は、従来のハードウェアトリガーを補完する機能であり、その利便性と有用性から非常に注目されている機能である。
ゾーントリガー機能は継続的に改善され、従来のハードウェアトリガー機能では分離することが困難であった不具合波形や特定のパターンを、簡単に切り分けることが可能である。そして、最近のテクノロジーの進化により、演算波形やFFTによる周波数スペクトラム信号にゾーンの条件を適用する機能が含まれることで、その応用範囲が従来の電気・電子回路のデバッグから、EMIのノイズ評価などにも広がりつつある。
【著:Joel Woodward/Rohde & Schwarz】
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