ヒューズの故障については単にヒューズ自身が不良になったから切れたとは言えません。MIL-HDBK-217の注意書きにもありますようにヒューズ自身の故障なのか、回路異常による正常動作の溶断なのかが市場データからでは判断できないからです。したがって、ディレーティングによる故障率の改善は評価できず、MIL-HDBK-217では主に機械的な疲労と腐食の評価試験に基づいて次の値を採用しています。
基準故障率λb(0.01個/106Hr)×環境指数πE(GF:2)=0.02/106
また、日本のJEITA RCR9102B 「スイッチング電源の部品点数法による信頼度予測推奨基準」では、
0.02(個/106Hr) (GF相当)
となっており、偶然ですが両者とも同じ故障率になっています。
納入仕様書を交換する以上は単にカタログの記載だけでは不十分であり、設計に活かせる内容であることが望まれます。特にヒューズは重要安全部品ですのでメーカーから提出や管理してもらわなければならない項目もあり、使用者側の管理体制にも影響します。
【使用材料等の明記】
注)カタログなどで確認できる事項は当然記載してあるものとします。
などは仕様書に記載してもらう必要があります。
【仕様書に必要な特性曲線】
図5、図6などは上記のディレーティング設計に必要な図表ですので仕様書で規定しておく必要があります。
また、I2t-T特性曲線は溶断を保証する曲線と正常動作を保証する曲線の2本は必要です。
次回はこのI2t-T特性の使い方を説明するとともに一般的な注意事項を中心に説明をしたいと思います。
※1:資料1 JEITA RCR-4800
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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