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差動伝送路のケーブル・コネクターの選び方と設計上の注意高速シリアル伝送技術講座(8)(1/5 ページ)

基板間や筺体間の通信に使用されるケーブルとコネクターに求められる特性やその選定方法、ピンアサインなどについて説明していきます。

» 2018年03月13日 11時00分 公開

 送信デバイスと受信デバイスを接続し信号を伝達する媒体が伝送路(図1)ですが、単に配線をつなげるだけでは高帯域の電気信号を正しく伝達させることはできません。そのためPCB(Printed Circuit Board)、コネクター、ケーブルなど、伝送路を構成する各媒体のインピーダンスとその整合が重要になります。

 前回はPCBのマイクロストリップライン・ストリップライン伝送路の特性インピーダンスや設計方法について説明しました。今回は基板間や筺体間の通信に使用されるケーブルとコネクターに求められる特性やその選定方法、ピンアサインなどについて説明していきます。

図1 図1:差動信号 伝送路の3要素 PCB・コネクター・ケーブル

高速信号伝送に使用するケーブル・コネクターの概要

 特定の高速伝送規格を使用する場合、多くはケーブル特性やコネクターの形状に規定があり、設計では規格対応のケーブルやコネクターを使用することになります。

 ケーブル・コネクターが決められていない汎用高速シリアルを設計する場合や、規格準拠の場合でも信頼性の向上や不要輻射ノイズの低減、ケーブル長の延長などの高性能化を図る場合は、設計者がケーブルとコネクターを選定することになり、その設計次第で信号品質が大きく左右されることになります。

 高速の差動伝送では、まずインピーダンスの定義のあるケーブルとコネクターを採用します。差動インピーダンスは100Ω固定といった決まりはなく、終端抵抗値と設計したPCB上伝送路の特性インピーダンスに合わせ、コネクターやケーブルを選択します。差動終端抵抗値が90Ωの設計では、PCBのマイクロストリップライン、ケーブル・コネクターのインピーダンスも90Ωに合わせ、信号反射の原因になるインピーダンスの不整合を防ぎます。

ケーブルの要求仕様について

 差動伝送で使用される差動(平衡)ケーブルの「ツイナックス」や「ツイストペア」タイプ(図2)は、特性インピーダンスや単位長当たりのインサーションロス、ペア内(イントラ)・ペア間(インター)スキューなど各種パラメーターの規定があります。そのため使用するデバイスの仕様や規格と照らし合わせ、電気的仕様を満足するケーブルを選択します。

図2 図2:「ツイナックス」(左)と「ツイストペア」(右)のケーブル

 ここでは汎用高速シリアル伝送で一般的に使用される2種類のSerDesを例に、ケーブルに要求される仕様を説明していきます。

LVDS SerDesを使用する際のケーブル要件

 LVDS SerDes(図3-1)の上側4本のシリアルデータラインはパラレルバスの7倍の速度、下側クロックラインはシリアルデータの7分の1周期のクロック信号を送っています。このデータラインとクロックラインのタイミングは(図3-2)となり、シングルエンド信号のパラレルバスと同じのデータ信号とクロックのセットアップ/ホールドタイミングの規定があり、それぞれのデータライン受信端でのEYE開口が十分でも、デバイスで規定されるクロックとデータラインのペア間スキューパラメーター(RSKM:レシーバースキューマージン)で伝送距離が制限されます。

図3 図3:LVDS SerDesのケーブルI/F(左)とLVDSレーン間インタースキュー(右)
図4 図4:カメラリンク用 LVDS SerDesケーブル (写真提供:平河ヒューテック)

 そのためLVDS SerDesでケーブル長が必要な場合は、ペア間スキューの小さいケーブルを採用します。マシンビジョンで使用されるカメラリンクケーブル(図4)では、高額ですがペア間スキューが小さく、LVDS SerDesで5m以上の伝送距離を実現しています。

 LVDS SerDesを使用したアプリケーションは、カメラリンクの他にデジタルTVの筺体内配線、LCDモジュールインタフェース、マルチファンクションプリンタ、メディカル機器、映像機器、通信機器などで、基板間、モジュール間、筺体間のバス信号の伝送に使用されています。

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