差動ケーブルに対応した各種差動コネクターは、製品ごとの使用帯域(上限周波数)があります。そのため、まずコネクターの帯域を確認し、使用する帯域以上の製品を選択します。
ここではTDR*2)を使用し、以下の帯域別差動コネクター3種類のインピーダンスの特性と帯域の関係について説明していきます。
TDRは信号立ち上がり時間を調整した矩形波をDUTに入力し、反射を観測することで時間軸でのインピーダンス特性を評価する手法です。
TDRを使用して低帯域の差動コネクター(レセプタクル/図14-1)を評価した結果が図15です。
この低帯域のコネクターにTDRでエッジレートの速い(Tr20-80%=70ピコ秒)矩形波を入力すると、RJ-45の100Ω標準インピーダンスから大きく乖離(高:120Ω 低:60Ω)した結果でした。TDRの矩形波Tr=70ピコ秒は周波数換算で5GHz相当(帯域≒0.35/Tr)で、この低帯域コネクターは、電気的にGHz帯の高周波向けではないことが分かります。
中帯域(図14-2)と高帯域コネクター(図14-3)のTDRの結果が図16です。
中帯域(2GHz)FFCコネクターでは、レセプタクル(基板側コネクタ)とケーブルの接続部で90Ω弱のインピーダンス低下が見られる程度で、上下する大きなあばれもありません。
高帯域(5GHz)USB Type-Cコネクターの標準インピーダンスは90Ωですが、TDR測定でも90Ω近辺で安定し、変動も少なく良好な結果です。
この2つのコネクターは中・高帯域向けにコネクター内部もインピーダンス整合を考慮し作られています。
しかし低帯域コネクターを高帯域で使用すると、ピン部分や内部配線にインピーダンス整合が取れない部分があり、エッジレートの速いTDR(Tr=70ピコ秒)の評価では図15-1のように各部位でインピーダンスミスマッチにより信号が大きく反射していることが分かります。
この低帯域コネクターの実使用帯域に近いエッジレート(Tr=350ピコ秒≒1GHz[測定器のTr低限])に下げたTDR測定の結果が図17です。
TDRで入力される矩形波のエッジレートが遅くなることで、インピーダンスミスマッチによる上下のばたつきが大きく軽減していることが分かります。
横軸周波数で入力信号がどの程度反射しているのかを示したものが図17右のリターンロスになります。600MHz以下ではコネクター部の反射は-20dB(電圧比10%)程度と小さく、実使用帯域では問題ないことが分かりますが、800MHz以上ではインサーションロスは-6dB(50%)程度で、入力した振幅電圧の半分が反射していることが分かります。
基板間や筺体外の高速信号伝送通信では、PCB・コネクター(レセプタクル・プラグ)・ケーブルが伝送路ですが、1カ所でもインピーダンス整合が取れていない部位があると、多重反射が発生しその反射が減衰せずにデバイス受信端に到達すると受信端EYEパターンに影響が表れ、信号品質の低下を招きます。
*2)TDR(Time domain reflectometry):矩形波を入力し時間軸で伝送路のインピーダンスを解析する手法
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