ITとOTネットワークを融合する「TSN」の概要と実装:IIoTの実現に不可欠(4/4 ページ)
またこのTSN IPには、統合時刻同期 L2スイッチも含まれる。外部TSNスイッチで別のポートを割り当てることなく、多くの産業用アプリケーションで必要とされるチェーン型もしくはツリー型のトポロジーを作ることができる。IEEE P802.1CBのシームレスな冗長性にも、この追加のポートが必要になる。図3にTSN IPのイメージを示す。ユーザーは、スイッチを統合するかどうかを合成前に自由に構成できる。
図3:CPUコア搭載FPGA内の TSN IPのイメージ(Xilinx Zynq-7000 /Zynq UltraScale+ MPSoCの場合)(クリックで拡大)
インスタンシエートされたTSN IPコアは、トラフィッククラスごとに個別のAXIストリーミングポートを提供する。スケジュールされたトラフィックと予約トラフィック、ベストエフォートトラフィックがサポートされている。図4にトラフィック クラスごとのダイレクト メモリアクセスを含む、TSN IP実装評価用システムのブロック図を示す。
図4:評価用の TSN 実装例(Zynq UltraScale+ MPSoC を使用)(クリックで拡大)
また、図5に示すように2台のボードを接続すると、ネットワーク トラフィックの送受信が可能になり、TSNネットワークの性能を検証できる評価システムやデモ用アプリも存在する。
図5:TSN 評価システム例(Zynq UltraScale+ MPSoC を使用)(クリックで拡大)
TSNはITとOTネットワークの融合を可能にし、ネットワーク コネクティビティやスケーラビリティなどで大きなアドバンテージをもたらす。All Programmable Zynq-7000やZynq UltraScale+ MPSoCなどのCPUコア搭載FPGAにTSNを実装すると、ユーザーは単一チップソリューションを手に入れられる。エッジでIIoTアプリケーションを実行する処理能力も、プロセッシングシステムとプログラマブルロジックに備わるのだ。さらに、プログラマブル ロジックは柔軟性を持つため、TSN規格やマーケットセグメント固有の適合性試験の進捗に合わせてIPコアをアップデートできるという利点も享受できるようになる。
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