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DC-DCコンバーターのAC特性DC-DCコンバーター活用講座(16) データシートの理解(2)(3/4 ページ)

» 2018年03月26日 11時00分 公開

出力電圧の温度係数

 内部バンドギャップ電圧レファレンスは、動作温度範囲では電圧は非常に安定していますが、多少の変動はあります。出力電圧の最終的な温度係数(TC)は、動作温度の限界値における出力電圧の、室温における公称出力電圧からの相対偏差として定義されます。これは、通常、%/Cまたはppm/K(ppm:100万分の1)を単位とした数値で表されます。温度係数は、通常、低温ではプラスになり高温ではマイナスになります。

 TCを決めるためには、必要な周囲温度を作り出せる恒温槽が必要です。室温TRTでは、出力電圧VOUT(TRT)は、DC-DCコンバーターを20分間動かして温度を安定させてから、公称負荷にて測定されます。同様に、動作温度範囲の限界値において、同じ手順で測定を行います。TCの計算には次式を用います。

式2:温度係数の計算

 TCの標準値は±0.02%/Cで、これは、25℃のときに出力電圧が公称値になるのであれば、+75℃ではそれより1%減り、−25℃では1%増えることを意味します。

負荷レギュレーション

 負荷レギュレーションは、最小負荷(ML)から全負荷(FL)までの許容負荷範囲における出力電圧の測定値の最大偏差(%)として定義されます。通常、入力電圧は公称電圧VNOMに固定されます。注意しなくてはならないのは、多くのコンバーターは適切なレギュレーションを行うには最小負荷が必要で、また、過負荷保護機能を備えていることです。そのため、MLとFLを超えて負荷レギュレーションを求めるのは正しくありません。

 通常、出力電圧は負荷電流とともにリニアに変化します。そのため、規定の負荷範囲内では、負荷レギュレーションの計算に必要な測定点はわずか2箇所です。例えば、最大値の80%の公称電流値にて規定されるとすると、負荷レギュレーションの測定は、MLおよび半負荷(半負荷=(ML+FL)/2)時の出力電圧、FLおよび半負荷時の電圧、MLおよびFL時の出力電圧、の3通りの方法で行うことができ、どの方法でもほぼ同じ結果になります。これら3つ計算は、いずれも図3.1に示したテスト装置と測定スキームで行うことができます。次式はMLおよびFLでの測定値に基づいたものです。

式3:負荷レギュレーションの計算

 もしデータシートで規定している出力電圧の精度(OVA)値が50%負荷時の数値で、負荷レギュレーションが1%と記載されていたら、全負荷時の出力電圧の相対変化は−1%で、最小負荷時の出力電圧の相対変化は+1%になります。そのため、出力電圧の測定値はOVA値より最大1%高くなるか低くなる可能性があります。もしOVA値が全負荷時の数値だとしたら、話は複雑になります。その場合、負荷レギュレーションの結果はマイナスにしかならないにもかかわらず、慣例では±何パーセントと書かれるからです。これは、もし負荷レギュレーションが1%で、OVA値が100%負荷時の数値だった場合、電圧の測定値はOVA値と同じかOVA値より最大1%低い値にしかならないということです。そして、当初の定義と比べると2倍の精度ということになります。

 非安定型コンバーターは、負荷レギュレーションもラインレギュレーションもないため、出力電圧が負荷に伴ってどう変動するかを表す場合には、公称VIN値を使って測定した負荷に対する偏差を用います。

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