ホールドオフは、データ捕捉のたびに複数のトリガーイベントが生じる場合に利用されるトリガー機能です。この機能を利用すると、オシロスコープは余分なトリガーイベントを無視して、捕捉時に1つしかトリガーイベントがないかのように働きます。これによって、表示が安定するのです。
図2は時間によるホールドオフを設定する例です。表示された波形は時間幅7マイクロ秒内に8パルスがバーストしています。8個のトリガーイベントが可能です。トリガーイベントとは、オシロスコープのトリガー機能を通常条件として作動させる信号条件のことです。ホールドオフとは、指定の時間またはイベント回数の間はトリガーを無視させる命令として理解しましょう。
図2では、ホールドオフが7マイクロ秒のバースト期間内は、トリガーを無視するよう設定されています。オシロスコープのトリガー機能が有効に設定されていると、トリガーは7マイクロ秒ごとに作動することになります。7マイクロ秒はバースト期間なので、次に続くトリガーは、次のバーストの開始ポイントで作動します。
イベントによるホールドオフでも同様のことが可能です。この例では8個のトリガーイベントに対しホールドオフします。これがパルスバーストの全期間になります。繰り返しますが、捕捉は各パルスバーストに自動的に同期します。注意すべきは、ホールドオフは、バースト内の特定ポイントへのトリガーを保証するものではなく、単にバーストに同期するものだということです。同期は信号が中断するまでは保持され、信号が回復した後は(恐らくは異なったポイントになりますが)再同期がかかることになります。
ホールドオフ開始カウンターは、ホールドオフカウンターが各捕捉の開始ポイントでリセットされるかどうか(=捕捉開始の設定)、または、連続的に蓄積されるかどうか(=最後のトリガー時間の設定)を決定するものです。トリガー入力は常時アクティブであることに注意ください。トリガーパルスを受け取ると、捕捉中でなくても、ホールドオフカウンターが捕捉開始ポイントで再スタートされるまでは、ホールドオフ条件としてカウントされます。同様に、同期プロセスが連続している場合は、最後のトリガー時間でカウントを開始するよう設定することによって、全てのトリガーイベントをカウントすることができます。
ホールドオフは便利なツールですが、使いこなすにはある程度の経験が必要になります。メーカーから提供されるマニュアルやアプリケーションノート、チュートリアル資料を調べると役に立つかと思います。
ミドルレンジのオシロスコープは通常、トリガー信号のタイミングおよび振幅のパラメーターを基準とする、強力なスマートトリガーメニューを備えています。スマートトリガーには、グリッチ、パルス幅、ウィンドウ、区間(周期)、ドロップアウト(信号欠落)、ロジックパターン、ラント*)、TV信号、さらにスルーレートなどが使われます。
*)ラント:正常なHiレベルまたはLoレベルに到達しないパルス信号
スマートトリガーの一例として、ここではパルス幅トリガーについて解説しましょう。パルス幅トリガーは、信号の幅に反応するもので、一般的にはパルスに適用されます。パルス幅が「〜より広い」「〜より狭い」「範囲内」「範囲外」といった、トリガーするための設定があり、複雑な信号をトリガーする上で強力なツールになります。
図3はパルス幅トリガーの例を示した波形です。これは、500ナノ秒から4マイクロ秒の間で、8種類の異なるパルス幅がある、PWM(パルス幅変調)の波形です。
先述のように、トリガーを定義するには4種類のパルス幅条件が使用可能です。図3は2.3マイクロ秒から2.7マイクロ秒の範囲のパルス幅を条件とする、パルス幅トリガーを示しています。図3内の幅トリガー設定ダイアログボックスは、「範囲内」条件のパルス幅にトリガーするための設定を示しています。この結果として、2.5マイクロ秒幅のパルスがトリガーイベントになります。その他のスマートトリガーも同様に、信号特性に基づく広範囲のトリガーイベントを生成できます。
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