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反相回路を持つ減圧機器の修理(後編) 逆相検知の仕組みを理解するWired, Weird(3/3 ページ)

» 2018年06月13日 11時00分 公開
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不良原因を探る

 さて、コントローラーの修理に戻ろう。コントローラーのリレー基板に実装されていたコンデンサーを確認した。図4に示す。

図4:リレー基板に実装されていたコンデンサー

 図4は反相検知回路に実装されたコンデンサーの写真だ。コンデンサーの表示値は0.068μF(68nF)で反相リレーのコンデンサーの値と同じだった。しかし、コンデンサーを取り外して単体で容量を測定したら45nFしかなかった。プラスティックコンデンサーは固体コンデンサーなので容量は低下しないと思い込んでしまったのが、大きな間違いだった。

 コンデンサーの容量が減ったことで正相の接続を認識できずリレーが動作しなかったので三相電源の接続不良と判定されたようだ。プラスティックコンデンサーの容量低下がコントローラーの動作不良の原因であることが分かった。さっそく代替品のコンデンサーを手配して交換した。図5に示す。

図5:コンデンサーを取り換えたところ。右下の茶色の部品が交換したコンデンサー

 図5の右下の茶色の部品が交換したコンデンサーだ。リレー基板をコントローラーへ取り付け、AC電源を通電してシーケンサーの動作が正常であることを確認し、顧客へ動作確認を依頼した。

 数日後に依頼主から『正常に動作している』との返事があった。やはり図4のプラスティックコンデンサーの容量低下が動作不良の原因だった。修理は無事に終えたが、使用されていたコンデンサーの耐圧は275Vacであり、AC200〜240V電源で使うには少し耐圧不足ではないかという、気掛かりだけは残ったが……。

今回の修理を振り返る

 三相モーターを使用した減圧機器ではモーターの正回転で負圧を作るが、逆接続すると逆回転し陽圧になってしまうのでポンプや関連部品が破損してしまう。そのため電源投入時に三相電源の接続順が正しいことを確認し、正しく接続されていない時はインターロックをかけて動作を停止させ、機器の破損を防止していた。

 なお今回修理した減圧機器のコントローラーは10年以上も連続動作していたようで、機器の連続運転中にコンデンサーの容量が低下しても反相リレーは動作を保持したままだったので、アラームが出なかったようだ。

 この修理後にも三相電源の接続を監視する回路を持った機器を4機種ほど修理したが、反相回路の定数は同じだった。また、コンデンサーの容量低下による動作不良は他の装置でも見つかった。なお最近の減圧機器はインバーターでモーターを回転させているので三相電源の接続の監視はなくなっていると思われる。

 今回の修理では劣化するはずがないと思っていたプラスティックフィルムコンデンサーの容量低下が見つかった。三相電源の接続の監視回路の落とし穴がよく見えた。

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