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伝送路の特性とシグナルコンディショナーによるジッタの補償高速シリアル伝送技術講座(11)(4/4 ページ)

» 2019年01月22日 11時00分 公開
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受信端イコライザー(CTLE)による伝送路インサーションロスのISI補償

 受信端でのインサーションロスの補償ではCTLE(Continuous Time Linear Equalizer)を使用します。

 CTLEの動作原理は、図8のように伝送路のインサーションロス特性の逆特性をハイパスフィルターで補償してISIジッタを低減しています。

図8:受信端イコライザー(CTLE)による高周波減衰の補償

 上記のハイパスフィルターだけでは信号は減衰するため、実際は図9左のような差動増幅器に可変の抵抗/容量(青丸部分)を付け、2つの定電流源を組み合わせて制御し、伝送路で減衰する高周波成分をアナログ的にブーストしています。高周波の入力では回路中のキャパシター(C)は低インピーダンスになり、Q1、Q2それぞれのトランジスタに流れる定電流源からの電流値が2倍(I+I2)になっていることが分かります。

図9=CTLE等価回路 / =可変AC frequency response

 CTLEのACレスポンス特性は一般的に図9右のようにログ(Log)で表示されることが多く、伝送路のインサーションロスはリニア(Linear)で表示されています。そのためCTLEのACレスポンスをLinearで表示して比較すると、伝送路の逆特性に合致しているかどうかがよく分かります。

 これら出力プリエンファシス/ディエンファシスと入力CTLEのイコライザーの伝送路損失補償の機能は高速のSerDesやリタイマー(CDR)製品の多くに内蔵されており、また高速伝送向けの汎用リドライバや差動バッファ、リピーターと呼ばれる単機能のデバイスにもこの機能が内蔵され提供されています。

 今回は伝送路の周波数特性とシグナルコンディショナーデバイスのエンファシス出力とアナログのCTLEでの補償動作について説明しました。送信側のエンファシス出力と受信側のアナログのイコライザーとも、インサーションロスにより減衰する高周波をブーストする似た動作をしていることが理解できたのではないでしょうか。

 次回はデジタル処理のイコライザーである送信端のFFE(Feed Forward Equalizer)/受信端のDFE(Decision Feedback Equalizer)と数〜数十Gbpsで使用されるCML系の高速差動伝送路の設計手法について説明していきます。


参考文献
・Keysight Design Forum 2018  V-by-One® US Signal Integrity technology講演資料 河西基文.
・ナショナルセミコンダクタージャパン株式会社 LVDSオーナーズマニュアル 第3版/第4版

筆者Profile

河西基文(かわにし もとふみ)/ザインエレクトロニクス シニアエキスパート

 ナショナルセミコンダクタージャパンやジェナムジャパンなど、25年にわたり高速通信系半導体の製品開発・サポートおよびマーケットの開拓に従事。伝送路を含んだ半導体の高速設計手法が確立されていない時代に、LVDSオーナーズマニュアルの作成など、同マーケットの成長・普及に寄与してきた。

 現在は日本のSerDes製品開発の先駆者的存在のザインエレクトロニクスで、プロダクトマーケティング・開発支援や人材育成などを行っている。


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