最後に、海外サイトから手配した急ぎの部品が行方不明になった事例を紹介するする。急ぎで手配した部品はチラーの温調制御に使用されている特殊なICで国内メーカーのカスタム部品であり、データーシートが開示されていなかった。専用ICが搭載された基板の写真を図3に示す。
図3の基板は8個の温度センサーを接続するアナログとデジタルの混合基板だ。ユーザー名やICのメーカー名が出ないように写真を加工した。このICには±5Vの電源が必要で、5V電源から−5Vを生成するコンバーターの回路が実装されていた。しかし、マイナス側の電圧がコンバーター回路の電解コンデンサーの劣化で−3V程度しかなかった。コンバーター回路の電解コンデンサーを交換したら−4.5Vが生成されるようになった。しかし基板の消費電流が倍増し、5V電源の負荷が0.3Aから0.6Aになってしまった。
通電したまま、基板の部品の表面を指で触れるとカスタムICはかなり発熱していた。そして、このICを取り外してみると、消費電流が元の0.3Aになった。明らかにこのカスタムICに不具合があり、交換が必要だ。
ただ、このICは市販されておらず、駄目元で海外通販サイトを検索すると、ヒットし、すぐに注文した。
急ぎで修理するよう依頼されていたので、一刻も早く、この部品が届くのを期待し、毎朝、配送状況をネットで確認していた。
いつものように注文してから1週間ほどで、日本に到着したところまでは良かった。ところが、通常、日本に到着して2日目には税関での検査が始まるのに、到着5日を過ぎても何の情報更新もなく、行方不明になったことを悟った。
急ぎ手に入れる必要があるので、部品がどこにあるかを海外の配送会社に問い合わせると、その配送会社は「日本郵便に引き渡した」と返事があった。そこで、日本郵便に問い合わせると「受け取っていない」という回答だった。らちが明かず、これでは時間がかかりそうなので、やむを得ず他のサイトにも部品を発注することにした。急ぎで手配した部品の配送の進捗状況を図4に示す。
図4の通り、11月20日に日本へ到着したが結局、1週間経過しても税関を通らなかった。日本着の9日後に日本郵便に引き渡され、その翌日、税関で検査が始まったことになる。注文時に、希望配送日を11月30日に設定したが、手元に届いたのは、12月3日をすぎていた。
急ぎで部品が必要な場合は部品の行方不明が一番困る。なお、部品の行方を探すために日本郵便へ調査を依頼したら『調査書』を出すように連絡があった。しかしこの『調査書』には販売元の住所や名称を記載する必要があった。Sellerに必要情報の開示を依頼したが返事はなかった。海外との取引は個人で部品を販売している会社もあり、英語でのコミュニケーションがうまくいかないこともある。
海外からの部品購買のトラブルは購買者が対処せざるを得ない。データシートが開示されていないような危ない部品は税関を通らない可能性もあり、買わないことが一番だが、今回はやむを得なかった。
海外からの部品購買では年に数回はこのようなゴタゴタに付き合わざるを得ない。まあ、ビジネス英語と海外物流の勉強になると前向きに考えるしかないだろう。
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