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フィルムキャパシター ―― 特性と構造中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(31)(2/2 ページ)

» 2019年05月29日 11時00分 公開
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フィルムキャパシターの材料と構造

 よく用いられる誘電体フィルムの種類を表3に示します。これらの材料を厚み1〜25μmのフィルム状に加工して表4に示す構造的な分類と組み合わせて各種のフィルムキャパシターが作られます。

表3 表3:材料別主要特性比較
表4 表4:フィルムキャパシターの構造による分類

フィルムキャパシターの主要工程

 表5にフィルムキャパシターの主要工程を記します。なお表には記載していませんが前工程として電極箔やフィルムを必要な幅に応じて裁断する工程があります。

表5 表5:フィルムキャパシタの主要工程
図2:メタリコン電極の概要

*メタリコン処理
 亜鉛、亜鉛・錫(スズ)合金、錫、アルミなどの溶射材と呼ばれる材料を溶融して高圧空気で霧状に対象物に吹き付けて皮膜を形成する表面処理法の一種で、フィルムキャパシターやセラミックキャパシターの内部電極と引き出し用外部電極を接合する工法として用いられます。
 溶射材1粒あたりの熱量は小さいので素子へのダメージは少ないのですが内部電極と溶射粒子の密着度が溶接などに比べて弱いので表面を粗化して機械的な噛み合わせを十分に確保し密着強度を改善していますが大パルス電流が流れると局所的に溶融して接合強度が劣化する可能性があります。

 今回はフィルムキャパシターの特性と構造について説明しました。次回はメタライズドキャパシターについて説明するとともにキャパシターのディレーティングの考え方と故障率について説明します。

執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。


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